先日、あたくしは、ウィーンのオペラ座舞踏会に出掛けましたの。
そこで、あの、日本のグラード財団の総帥・城戸沙織嬢と知り合いましたのよ。

あたくしの半分ほどの年齢の、野蛮な国に育った小娘でしたけれど、まあ、それなりに礼儀は心得ているようでしたわね。
あたくしが、
「今日は、オペラ座は大変な人ですこと」
と声をかけてやりましたら、
「ウィーン社交界の女王であるお夫人に、じかにお声をかけていただけるなんて、なんて光栄なんでしょう !! 」
と、それは感激していたわ。

ええ、ウィーンの社交界は、そんなに閉鎖的ではありませんのよ。
極東の成り上がり国家の成り上がり財団の小娘でも、礼儀と身の程さえわきまえていれば、門戸を開いて差し上げますわ。

それに……彼女は、なかなかいい趣味の持ち主のようでしたし。

彼女、自分を護衛させる美形戦隊をお持ちですのね。
彼女が先日のパーティに連れてきていたのは、そのうちの4人だけでしたけど。
黒髪短髪、黒髪長髪、金髪碧眼と、それから、いかにも受け受けしくて女の子めいた美少年が一人。

あたくし、その子が金髪碧眼とデキていることを即座に見抜きましたの。
城戸沙織嬢に確かめてみましたら、あたくしの慧眼に驚きつつも、その通りだとあっさり認めましたわ。
彼女、職場恋愛には寛大らしくて、仕事に支障が出ないなら、特に問題はないと考えているようでしたわね。


そう。
で、その二人。
金髪碧眼の方が氷河、女の子めいた方が瞬という名前だったんですけど、あたくし、その二人を使っての退屈しのぎを考えましたの。

ただ眺めているだけでも、十分に目の保養になるカップルでしたけど、それだけじゃ面白くありませんでしょ。
欧州の上流社会のメンバーが、どんなふうにして日々の退屈を紛らしているのか、その洗練振りを、グラード財団の若き総帥に教えてやりたい気持ちもありましたしね。
それに、その退屈しのぎには、彼女の協力を得た方がよさそうでしたから。


城戸沙織嬢には、欧州社交界の一員になる素質が十分にありましたわ。
私が話を持ちかけていくと、彼女は一も二もなく、あたくしの計画に乗ってきましたもの。
彼女も、まあ、結局は退屈を怖れる有閑階級の一人だったというわけですわね。

様、なんて素敵なプランなんでしょう!」
彼女は、そう言って瞳を輝かせると、むしろ、自分から進んで、あたくしに協力を申し出てきましたわ。






【next】