それは、さておいて。

恋人たちの苦悩は、1ヵ月ほど続きましたかしら。
あたくしは幾度も瞬に、沙織嬢や氷河を襲撃させ、束の間の逢瀬を二人にプレゼントしてやりましたの。
当然、会うたびごとに、氷河の苦悩は深まり、瞬の戸惑いは大きくなっていきましたわ。


「瞬、俺がわからないのかっ !? 」
様に盾突く者は、誰であろうと倒す!」
なーんて言って、実際に闘いはしても、結局とどめを刺すことはできない二人の様子を、あたくしは、自宅の上映室のスクリーンで、上等のワインを傾けながら鑑賞したわけですの。

沙織嬢も似たようなものでしたでしょうね。


でも、不思議ですわね。
あたくしは、瞬に、沙織嬢には怪我をさせないようにと指示を出しておりましたけど(あ、もちろん催眠術でですわよ)、氷河には本気でかかるように命じておりましたの。
なのに、瞬は、どうしても、氷河を倒すことができないのですわ。
氷河は、もちろん、瞬を傷付けまいとして防御一辺倒でしたけど、瞬までそんなふうだなんて。

あの二人の闘いは、愛というものについて、なかなかに興味深い考察をさせてくれるものでしたわ。






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