ニコルがなぜ泣くのか、クルーゼにはわからなかった。

求め続けた答えを見付けた。
それを手に入れるために、彼は行動した。
実に、ラウ・ル・クルーゼらしく。

だというのに、ニコルは泣いている。
「僕は、生きて──あの美しくもなければ純粋でもない、それでも誰もが必死に生きているあの世界で、隊長にそれを見付けてほしかったんです」

「それは無理だ。おまえがここにいるのに」
「…………」

ニコルは、涙までが甘かった。

ニコルをどれほど悲しませることになっても、どれほど泣かせることになっても、後悔はなかった。
クルーゼが、本当は愛したくてならなかった全ての人間たち──死んでいった者たちと生き延びた者たち、そして、クルーゼ自身と、彼のニコル──のために、これは彼が選んだ最善の選択だった。

彼等の心から、憎しみと悲しみの種を少しでも減らすために。






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