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G a m e F i s h e r # 5 5 0 0
James Heddon's Sons
Dowagiac, Michigan
c. 1923  4 3/4"  3/4oz.






魚釣りネタを書くことにする。
しかも70年以上も前のルアーのお話。




GameFisherとShakespeare


Heddon GameFisher #5500。
このルアーが登場したのが、1923年。日本はまだ大正時代である。
1910〜30年代というのは、Heddonという会社がもっともパワフルだった時代と言っても過言ではない。
Zaragossa。 Lucky13。TadPolly。Vamp。#210。などなど、その後 数十年間販売され続けることになる名ルアーは、ほとんどこの時期に発表されている。
木の加工技術や取り付けられた部品の質、塗装、ルアーのバリエーションなどどれをとっても、この時期こそまさに「Heddonの黄金期」と呼ぶにふさわしかった。
そしてそのパワフルさあってこそ、珍妙なモノも生まれてくるんだと思う。




このルアーの前身であるTadPollyは、ルアー頭部で水を受けその抵抗で潜行する、今のクランクベイトの元祖ともいうべきルアー。
投げてそのままだと水面に浮かび、糸を巻き始めると尻を振りながら水中へと潜行するTadPollyは、今のようなクランクベイトが確立されていなかったその年代、結構な釣果を発揮したと想像できる。売れ行きも上々だったに違いない。
Mr.James Heddon、暴走。
「よう、もっと水中でクネクネ動かしたらもっと釣れんべ」
と言ったかどうかは知らないが、とにかくGameFisherは「ジョイントで接合されたTadPolly」といった出で立ちで誕生した。
しかも3つにも分かれて。







ジョイント部とLリグ
さすがに70年経っているだけあってずいぶんボロボロなようにように見えるが、実際には表層のコーティング材に亀裂(age line)が入っているだけ。
芯の木材の部分は分厚い塗膜に守られ、よほどひどい状態で使用/保管されたわけでもない限り、深刻なクラックはそうそう入らない。
更に針先がボディに触れないよう工夫されたL-rig(金具)や、水底に達した時にボディ先端を守る金属リップなど、この時期のルアーは(過剰なまでに)数多くの部品と手間を掛けて作られており、それはこれらのルアーを「もはや単なる釣り道具ではないもの」にまで高めている。







見てのとおり、中央のブロックを金属板が貫通しており、それは前後ブロックに刻まれたスリットへ差し込まれ、各々がリベットで留められている。
つまり「ルアーにしては、相当凝った造り」な訳である。
これで動かないワケがない。
あたかも生きた小魚のように水中をクネクネと泳ぎ、魚を誘うことだろう。
僕も初めて見た時そう思った。
もちろんHeddonの設計者たちもそうだったろう。誰一人疑わずに。
ご丁寧にカタログにも「蛇のようにしなやかに泳ぐGameFisher」の挿絵まで入れた。

しかし。
動かない。





ところで。
前後2ブロックでジョイント1つ、という構成のルアーはたくさんある。実際にそれを使っているところを見たことがあるひとは「なんて本物っぽいんだ!」と思ったことだろう。
更にジョイントを増やせば、更にしなやかに泳ぐに違いない。
誰でもそう思ってしまいそうだが、実際には水の抵抗と支点の関係か、それぞれのブロックの動きが相殺されるのか、残念ながらこのGameFisherはあまりパッとしなかった。
はっきり言ってしまえばアイデア倒れ、失敗作である。
実際、兄貴分のTadPollyは1918〜41年の23年間売られ、その後はプラスチックルアーへと姿を変えつつ現在でも売られ続けているのに対して、GameFisherは1923〜33年の10年間発売されたのみだった。








まれにグラスアイ(ガラス製の目玉)が嵌め込まれたものもあったらしい。







どうもHeddonという会社は伝統的にジョイントルアーを設計するのが下手なのか、どう見てもフロントフックの付け位置を間違っているとしか思えないZig-Wagなども、やはりこの時期に誕生している。
いや、この時期だからこそ、このヘンテコなモノを大真面目に製品化できたのかも。
このヘンテコさを許容できるだけの企業のパワー、大らかさがあったからこそ。


しかしこうして見ると、誇らしげに金属リップに刻まれた「Heddon's GameFisher」という銘も、なんとも皮肉っぽいね。

 Gamefishers used only.

生活の懸かった漁師は使用禁止。
だって釣れないから(笑)






TadPolyでこの色(GreenScale)でハート型リップつきでEx以上のを探してんだけど・・・どっかないすか
Red Head and Tailと Green Scale。
幾重にも塗り重ねられた塗装面は、非常に美しく、かつ強度もある。
写真では分かりにくいが、Green Scaleの方は「シルバーの上にクリアグリーン」で、魚のウロコのメタリック感を表現している。
模型誌で今ごろわざわざ取り上げるような最新テクニックでもなんでもなくて、70年以上前に既出です。





reference
"Fishing Lure Collectibles" Dudley Murphy & Rick Edmisten
"おかしなおかしなプラグ集" 山田周治

M a y 2 0 0 1  J i - m i - p a g e  J. Y a m a s h i t a