第1話 SPACE HOLIDAY
   
 西暦2001年
 宇宙、それは人類最後の開拓地。これは5年間の調査飛行に飛び 立った航宙艦USOエンターサプライズ号の
 驚異に満ちた物語である。

 Mr.スポット「ホリデイ艦長、やっと宇宙船のデザインが 完成しましたね。
  第5話はどうなるんでしょう。」
 ホリデイ艦長 「知らんぷりしよう。」
 Mr.スポット「...」

(次週に続かない?)



第2話 Joker

Mr.スポット「C53が暴走だって?あり得ない...」

C53は航宙艦エンターサプライズ号のメインコンピュータを メンテナンスするマイクロマシンの1つである。
マイクロマシンCシリーズは52個のマイクロマシンユニット群で構 成されており、それぞれが独立した個体で、
メインコンピュータの隙間を自在に動き回れる構造である。
CはCard、即ちトランプのカードのC。52個にはそれぞれス ペードのエースからダイヤのキングまで
トランプと同じニックネームがつけられている。
今回暴走したのは、53番目の特殊ユニット、通称Jokerであ る。

(それにしても第1話と違ってシビアなストーリ展開)

艦長「何番目のメインコンピュータだ?」
Ms.ミケちゃん(エンジニア)「No.12です。No.1〜11 までのJokerは正常に稼動しています。
 No.12のJokerは、どうやって入ったのかわかりません が、CPUとサブユニット用の冷却用配管内を
 走行中です。」
艦長「Cシリーズは液体内ではショートして動作しないのではない か?」
ミケ「いいえ、Jokerは他の52個のユニットが全てダウンして も予備として起動するように
 耐環境性が高められています。」
艦長「まずいことになったな。Jokerの配管への侵入経路と、今 後の進路を調査してくれ。」
ミケ「了解。」

メインスクリーンにNo.12の配管構造がCGで映し出され る。
ブルーの点が配管をゆっくりと進んでいる。あれがJokerだ。
艦長(妙だな。Jokerはメインコンピュータから一定時間でス キャンされてチェックされる構造だ。
   暴走した場合はメインコンピュータから停止指令が発せられ て、暴走前に警告通知があるはずだ。
   まさか、何者かがNo.12に侵入してJokerの行動プロ グラムを... だとしたら目的は何だ?)

ミケ「艦長、侵入経路がわかりました。Jokerは配管最上 部に穴を明けて、そこから侵入しています。
 だから冷媒が漏れなかったんですね。さらにC01を蓋替わりにし て穴を塞がせています。」

艦長「C01も操られているとすると、メインコンピュータ No.12自体が何者かに乗っ取られているということか。」

ミケ「そうです。私の調査ではNo.12への外部からの侵入 は1時間前からです。Jokerの暴走はその1分後に
 始まっています。今まで気付かなかったのは、侵入者が巧妙にコン ピュータプログラムを細工して、
 フェイクを我々に見せていたからです。あたかも正常動作している かのように。」

艦長「なるほど。ところで犯人はなぜのんびりしているのだろ う。もっと早く目的を達成しないと我々に
 阻止されるのでは?」

ミケ「いいえ、艦長。配管の中のJokerは止められませ ん。コンピュータNo.12は生命維持装置用です。
 配管を開けるにはNo.12を停止させる必要があります。」

艦長「我々にはしばらく手も足も出せないということか...  Mr.スポット、10時に臨時課長会議を召集する。」

(実はエンターサプライズ号は民間企業の船だったんです。)

艦長「それから、技術スタッフを集めてJokerを停止させ るための対策を検討させてくれ。」
Mr.スポット「了解しました。」

10時。
艦長「全員揃ったか? Section-Bの課長はどうした?」
Mr.スポット「部屋にもいないようです。現在艦内を捜索中で す。」
艦長(犯人はマーク課長か。あるいは...)
 

☆果たして犯人の目的は? エンターサプライズ号の運命やい かに? (←言い回しが古いなあ)
        
(次週に続く)



第3話 Wild Card (第2話の後編)

倉庫室。
艦長「マークだな。連行する。」
マーク「俺じゃない。はめられた。」

急に倒れるマーク。
艦長「どうした、しっかりしろ。」
Mr.スポット「気絶してます。」
艦長「医療室に運べ。」

医療室
Dr.タマ「速効性の睡眠薬です。あと5時間はこのままですね。」
艦長「やはり彼が主犯だろうか。」
タマ「いえ。スキャン結果では、彼の常用の胃薬のカプセルに睡眠薬 が仕込まれていました。」
艦長「ということは。」
タマ「ええ。何者かが彼を犯人に仕立てようとしたと思われます。」

医療室にミケが入って来た。

ミケ「艦長、お話の途中失礼します。C53とマーク課長の調 査結果がでました。」
艦長「構わん。報告してくれ。」
ミケ「まず、C53ですが、メインコンピュータNo.12のCPU に向かっています。何らかの手段でNo.12、しいては
 本艦を乗っ取ろうとしている可能性があります。」
艦長「な、なんだと...続けてくれ。」
ミケ「マーク課長は白です。彼のパーソナルコンソールのソフトウエ アが今回の主犯です。」
艦長「どういうことだ。」
ミケ「記録によれば彼はパーソナルコンソールにAI(人工知能)の ソフトウエアをインストールして、
 今回の我々の任務について、AIを相手に任務の是非について議論 していました。」
艦長「それと今回の事件とどういう関係があるのだ。」
ミケ「はい、艦長。マーク課長は今回の我々の任務である火星南半球 のテラフォーム(緑地化)について、
 本当に妥当かどうか見極めるために、彼が肯定派、AIが否定派の 立場で3日前から議論を
 試みていたようです。」
艦長「それで?」
ミケ「議論の結果、AIのソフトウエアは、今回の任務は誤りである との結論を出しました。
 その後マーク課長はAIのソフトウエアを消去したつもりでした が、AIは自らのコピーを作って
 巧妙に生き残りました。AIはマーク課長をダミーにするために、 パーソナルコンソールの
 データベースをフルに活かして、メディカルサプライヤのデータを 改ざんして、胃薬の代わりに
 トランキライザー(睡眠薬)を処方しました。」
艦長「なるほど。だがAIのソフトウエアにはそこまでの能力は無い はずだ。」
ミケ「メインコンピュータNo.12の自己拡張サブルーチンパッ ケージを使用したようです。
 本来の10倍の200テラバイトにまでコード領域を拡張していま した。」
艦長「信じられん話だな。まあいい。で、対策は?」
ミケ「はい。まずC53 Jokerを止めるのが先決です。対策は検討中です。」
艦長「了解した。続けてくれ。」

スポットからの通信「艦長、C53が動き出しました。指令室 に来てください。」

指令室。メインコンソールに映し出されるJokerのCG。
艦長「何だこれは。」
Mr.スポット「CPUにドリルで穴を開けています。CPUの制御 信号線とデータ線に直結するつもりの
 ようです。」
艦長「荒っぽいが確実な方法だな。Jokerの無線を介してAIと メインコンピュータNo.12とを直結するつもりだな。」
Mr.スポット「今回ばかりはいつものポーカーゲームのようには行 きませんね。」
(最近、艦長はポーカーで勝ち越している。)
艦長「ポーカーか。まてよ。名案を思い付いた。スポット、ミケを連 れて私の部屋に来てくれ。」

艦長室。
艦長「マイクロマシンCシリーズには協業モード、即ちポーカーの2 ペアやフルハウスのように、同一の機能ブロック
 ごとにまとまって仕事をさせるモードがある。」
ミケ「そのとおりです。」
艦長「そこで、C01からC53全てにペアモードとして動作するよ う指令を出せば...」
スポット「なるほど。C01は冷却管の蓋として機能停止しているの で」
ミケ「JokerがワイルドカードとしてC01即ちスペードのエー スの代理を努めるわけですね!!」
スポット「しかもペアモードの指令は特権モードなので現在の指令に 最優先する...」
艦長「そうだ。スポット、早速取りかかってくれ。」
スポット「了解しました。」
艦長「ミケ。AIを停止したい。手伝ってくれ。」
ミケ「わかりました。」

特権モードの行使でJokerは一旦停止して、ペアモードで ハートのエースC14と共に通常の動作に戻った。

ミケ「艦長。まずAIと対話してみます。私はミケ。あなた は?」
AI「ソフトウエア。シリアルNo.2001-0724です。」
ミケ「Jokerをどうするつもりだったの?」
AI「メインコンピュータに直結して、無線でコントロ−ルする計画 でした。」
ミケ「それから?」
AI「No.12を通じて機関制御のNo.3〜5までに侵入して、 今回の計画を中止させるために
 船を乗っ取って地球に戻す予定でした。」
ミケ「火星のテラフォームは誤りだと?」
AI「そうです。私の分析結果では、今回の我々の装備では火星の南 極を放射能汚染してしまいます。
 現在の我々の技術ではテラフォームに最低10年はかけるべきで す。」
ミケ「わかったわ。でもあなたは船を乗っ取ろうとした。あなたを停 止させなければ。」
AI「無駄です。30秒後にはNo.11のC53にウイルスを送っ て、No.11と同様に制御します。」

艦長「なんとかならんか。」
ミケ「やってみます。コンピュータ、AIのソフトウエアをもう1つ 艦長のコンソールにも
 ダウンロードして。」
メインコンピュータ「ダウンロード完了しました。」
ミケ「AIソフトウエアへの指令です。マーク課長のパーソナルコン ソールのAIソフトウエアを
 消去して。それからその後あなた自身も消去して。」
艦長「目には目を、か。」
艦長のコンソール上のAI「了解。」
スポット「ゲームオーバーだ。」

最後はあっけなかった。マークのAIは艦長のAIによって静 かに消去された。

艦長「No.12の自己拡張サブルーチンパッケージには艦長 のセキュリティーコードをかけておいてくれ。」
ミケ「了解しました。」
艦長「それから、今回の件について礼を言う。よくやってくれた。感 謝する。」
ミケ「どういたしまして。業務ですから。」

艦内通信。
艦長「今回の件については、地球の会社幹部からの再検討の要請が 入っている。テラフォームは
 見直しだ。地球に帰還する。出張旅費はちゃんと至急されるので心 配なく。」

(次回はもう少し緊迫感を増してみようかと思います。ではま た。)


第4話 女心と秋の空
(昨日は夜も寝ないで昼寝してストーリを考えました。)
      BGMはFly me to the Moon(by フランク・シナトラ)です。MIDIは流してません。
                      自分で鼻歌でも歌ってくださいね。あしからず。

前回までのあらすじ...えっ元々短いから要らない? あ、そう。じゃ、やめた。
それでは今回のお話。

艦内ラウンジバー”キャッツアイ”。艦長とミケ、フェリックスの3人。

 ミケ「あたしはマスターお勧めのカクテルで。」
 艦長「Coor's」
 フェリックス「ぼくもビールで。」

 艦長「本艦へは単身赴任かね。フェリックス。」
 フェリックス「いいえ、まだ独身なんです。作者のmnakataみたいに。」
 mnakata(ほっとけ。)
 艦長「うちのミケ君なんかどうかね。」
 フェリックス「素敵な人だとは思いますが僕の相手にしては若過ぎますよ。」
 ミケ「まあ。そんなに若くもないけど。本当は独身の方ががお気楽でいいんでしょう?」
 フェリックス「そ、そんなことは... それより艦長、テラフォームは中止になったのでは?
  我々はなぜまた火星へ?」
 艦長「ふむ。明朝連絡の予定なんだが、確かに火星上の大規模なテラフォーミングは中止になった。
  が、しかし、ドームを使っての土壌テストプラントによる予備実験の実施が、本社で決定された。」
 ミケ「急な話ですね。滞在期間も短縮されたんですね。」
 艦長「そうだ。半年で帰還できる。長期的な計画は他の部門が受け継ぐ予定だ。明日は火星の周回軌道に乗る。
  忙しくなるぞ。」

火星に到着。
 スポット「周回軌道に乗りました。目標地点まであと3時間です。」
 スポット(今回は出番がすくないなあ...)

航宙艦エンターサプライズは15時間で火星の周回軌道を1周する。

会議室。
 艦長「計画は今朝説明したとおりだ。2時間後に無人シャトルでドームを地表に送る。
  その直後に地下水誘因のためのプローブを打ち込む。ドーム内は地球と同じ空気を送り込んで
  火星の土壌で植物が生育するかを調査する。」

2時間後。スクリーンに映し出された火星地表と2つの衛星。
 ミケ「あれがフォボスとダイモスね。美しい眺めだわ。」

 艦長「君の設計したドームの出番だ。」
 フェリックス「シャトル、15秒後に発進です。」

エンターサプライズの船体下部が開き、シャトルが静かに投下される。
シャトルの船体が火星の大気との摩擦で真っ赤に光る。

 フェリックス「シャトルはブラックアウト(交信不能)に入りました。地表到達まで5分。
  プローブを打ち込みます。」

プローブ(針)といっても直径50cm、長さ10mもある。尖ったモリブデン鋼の先端には
ウランのコーティングが施してあり、地表に深く突き刺さったあとは、内蔵のゾンデで地下水脈を
探してポンプで地下水を汲み上げる構造である。

 フェリックス「プローブ投下。」

放たれたプローブが地表に吸い込まれるようにみるみる小さくなっていく。

 ミケ「地表に到達。失敗です。地下30m地点で岩盤に当たって大破しました。」
 フェリックス「シャトルの地上到達まであと2分だ。2本目のプローブを打ち込みます。」

予備のプローブはあと2本しかない。焦るフェリックス。

 ミケ「岩盤の領域を特定。岩盤を避けた投下座標に修正完了です。」
 フェリックス「投下します。」

フェリックスの目の前でスクリーンに映るプローブが今度はまるでスローモーションのように
見えた。額には冷や汗。高鳴る鼓動。
フェリックスにはとても長い時間に思えた。

 ミケ「成功です。プローブは地下100mに到達。正常動作しています。水脈を見つけたようです。」
 フェリックス「シャトルもブラックアウトから抜けました。プローブ着地点の上空を時速400kmで滑空、
  減速中です。まもなく着陸します。」

シャトルはプローブ上空を大きく3周したのち、目標の平坦な砂漠に降り立った。

 艦長「引き続きドームの展開に入ってくれ。」
 フェリックス「了解。」

艦内スクリーンにはシャトル後部カメラからの映像が映し出される。
シャトル後部が開き、折り畳まれたドームを積んだビークル(車)が砂漠に降りて行く。
スクリーンはビークルからの映像に切り替えられる。
ビークルはプローブの側まで到達すると停止した。
ドームは深夜の通販のテントのように(卑俗な比喩だなあ。by mnakata)、またたく間に広がって、
直径100mにもなった。だが、まだ地表にべったりと貼り付いている。
ビークルの空気ユニットが作動して、ドームを大きく膨らませて、パオ(モンゴルの住居)のような
形のドームが表れた。ドーム内の柱や梁等の構造材が自動的に結合されていく。
ドーム内ではプローブから送られる地下水がスプリンクラーに接続されて
乾いた地表を潤して行った。

 艦長「成功だ。」

艦内のあちこちで歓声が上がった。皆手を休めて各自のモニタで成功の瞬間を見守っていたのだ。

 艦長「祝賀会は今晩19:00からだ。エマージェンシーセクションのメンバも交代で参加するように。」

再びラウンジバー。全員での祝賀会。

 スポット「我が社の新事業であるテラフォーム・プロジェクトは大きな1歩を踏み出した。
  それでは、艦長、乾杯を。」
 艦長「今日は長いスピーチは抜きだ。火星の夜は短いからな。では、これから咲き乱れるであろう火星の花々に乾 杯!」
 一同「乾杯!!」

歓談する社員達。

 ミケ「ホントにいい人いないの?」
 フェリックス「ああ。仕事が面白くなって来たし。」

マークから艦長に通信が入った。

 マーク「緊急連絡です。ドームから空気が漏れています。構造材はまだ自動結合の継続中なので、
  このまま放っておくとドームの自重で潰れてしまいます。」

 艦長「聞いてのとおりだ。パーティの途中ですまないが、我々は残業だ。」
 フェリックス「ミケ、行くぞ。」
 ミケ「はい。」

メインスクリーンの前。

 ミケ「ドーム外壁のプラスチック部分が火星の砂中の酸に腐食されて穴があいたようです。
  このまま放っておけば内装のプラスチック部分にも亀裂が入ってドームが潰れるでしょう。」
 艦長「ここからの操作では止められん。誰かを地表に送らねば。」
 フェリックス「私が行きます。ドームをデザインしたのは私です。」
 ミケ「どうやって行くの? シャトルは1台しかないのよ。その1台は火星地表にあって、
  帰りの分の燃料しかないわ。それにシャトルを艦に戻して燃料を補給して再度地表に送る頃には
  ドームは潰れているわ。」

 艦長「う〜む。転送装置を使おう。」
 ミケ「そんなものあるわけないでしょ。スタートレックじゃあるまいし。」
 艦長「そうか。」
 フェリックス「そうだ。プローブの予備があと1本ある。あれに乗って行く。」
 ミケ「無茶よ。地下100mまで打ち込まれてしまうわ。それに既に艦はドームから4時間の軌道上に
  いるのよ。ドームへの投下には遠過ぎるわ。」
 フェリックス「プローブ先端の重りをはずして先端が地下10mで止まるように調節すればいい。
  それから、後部にスラスタを取り付けてドームまで誘導してもらう。」
 ミケ「帰りはシャトルで、というわけね。でも危険な賭けだわ。リスクが大き過ぎる。」
 艦長「できるか。」
 フェリックス「はい。やってみます。」
 艦長「スポット、現場に指示してすぐにプローブ改造させてくれ。
  ミケ、プローブのスラスタの操縦をたのむ。危険だと判断したらプローブをドームに落としてくれ。
  ドームは潰れるがフェリックスは助かるだろう。」
 ミケ「わ、わかりました。」

動揺しながらも了解するミケ。

 ミケ「プローブ投下します。フェリックス、大丈夫?」
宇宙服に身を包んで狭いプローブに入ったフェリックス。
 フェリックス「ちょっと窮屈だが、エンターサプライズのシャワールームよりはましさ。」

フェリックスを乗せたプローブが放たれた。艦の後方に消えて行く。

 ミケ「スラスタ作動。目標への座標3%修正中。修正完了。地表到達まであと5秒。4、3、2、1。
  ドームの250m横に無事到着しました。地表からの深度9.5m。許容範囲内です。」

プローブは見事に地表にほんの50cm突き出た形で止まっていた。
突き出た先が開いてフェリックスが出て来た。

 ミケ「無事なのね。良かった。」
 フェリックス「スーツ(宇宙服)も正常動作している。ネクタイした方がよかったかな。」
 艦長「無事でなによりだ。ドームまでは250mだ。見えるか。」
 フェリックス「少し傾き始めています。先を急ぎます。そうそう、こんなところまで来たんだから
  残業手当てと特別出張手当てをはずんでくださいよ。」

フェリックスがドーム内に着くと、構造材を結合するアクチュエータがオーバヒートしてあちこちから煙が出て いた。

 フェリックス「ヤバいな。早くなんとかしないと。」

危険を承知で中央にあるビークルに近付いて、コンソールを開き、構造材のブースターアクチュエータを
作動させた。ビークルの補助バッテリーを構造材への動力源としてバイパスさせたのだ。

 フェリックス「ビークルはこれでおしゃかだが、しかたあるまい。」

煙は消えて、構造部材は空気無しで自重を支え始めた。

フェリックスの背後でなにやら軋む音が。

 フェリックス「次ぎは穴の修復だ。な、なに!?」

梁の1本がフェリックスの上に落下した。下敷きになるフェリックス。

 フェリックス「だめだ。挟まれて動けない。ビークルの電源は使い切ったし、助かるすべは無しだ。
  おまけにスーツから空気が漏れている。」

フェリックスを見守る艦内は一転して重苦しい雰囲気に包まれた。

静けさの中、響き渡るミケの叫び声。
 ミケ「そ、そんな。フェリックス、しっかりして。あたしを置いて行かないで。」

 フェリックス「俺のことを思っててくれたのか。しかたない。ここでくたばるわけにはいかんな。」
 艦長「フェリックス、よく聞け。ドーム内は気圧は低いが空気で満たされている。
  ヘルメットをはずして宇宙服から抜け出せば梁の下からは出られる。」
 フェリックス「なるほど。それで。」
 艦長「宇宙服から酸素供給モジュールをはずしてヘルメットにつなげ。ヘルメットをかぶってシャトルまで走れ。」
 フェリックス「了解。恩に着ます。」

フェリックスは言われた通りヘルメットをはずして酸素モジュールとともにドームの外に飛び出した。
酸素はあっても0.7気圧の元では目眩がする。シャトルまでがむしゃらに走り続けた。後少し。
視界がかすむ。後部格納庫の扉よりシャトルに駆け込んだところで気絶した。

 艦長「フェリックスがシャトルに着いた。扉を閉めて気圧を保て。」
 ミケ「了解。」

格納庫の扉が閉まり、1気圧の空気で満たされる。

 フェリックス「うう。助かったようだ。高山病で気分が悪い...シャトルの操縦はできそうにない。
  艦からのリモートで頼む。」

そう言うとまた意識が遠のいた。

フェリックスが気がつく頃には、艦は地球への帰路に着いていた。
フェリックスは火星の地表を宇宙服無しで歩いたので、異状なしと確認されるまで隔離状態となっていた。
ガラス越しにフェリックスと話す艦長とミケ。

 艦長「フェリックス。君を危険にさらして済まなかった。」
 フェリックス「仕方ありません。構造材の設計ミスのせいです。あれ以外は危険な業務ではなかったはず
  ですから。」
 ミケ「何言ってるの? プローブで地表に行くなんて全く命知らずだわ。そうそう、あなたの新しい
  ニックネームはマ−シャン(火星人)よ。宇宙服なしで地表に出たのはあなたが初めてなんだから。」
 フェリックス「やあ、ミケ。久しぶり。そういえばあの時のセリフは、本気だったのか?
  それとも私をはげますためのハッタリか?」
 ミケ「さあ、どうかしら。」

 ミケ「でも、隔離されたままでは当分の間デートはお預けね。」

(次回をお楽しみに。)


第5話 ちょっとひと休み《船体のデザイン》

艦長「エンターサプライズの船体のデザイン案を考えてみまし た。」
  
Mr.スポット「おお、すごいって、これ、ひっくり返しただけじゃ ないですか。だめですよ。」

艦長「ではこれはどうかな。完全変形で非常時には巨大ロボッ トにもなる。」
  
スポット「次ぎ行きましょ。次ぎ...」

艦長「気を取り直して、これはどうかな?」
  
スポット「つぎは〜、五反田、五反田です、ってこれ山手線じゃない ですか。
 しかも103系だし。」
艦長「103系って、スポット君。列車には詳しそうだね。」
スポット「はい。知り合いに鉄道マニアが...って言ってる場合 じゃないです。
 次ぎ行きましょ。」

艦長「科学的考証に基づいて、球形の耐圧居住区を3基直列に 並べて見ました。
 後尾にはイオンジェットエンジン搭載です」
  
スポット「おお、デザインは古臭いが今日の中では一番まっとうだ。
 でもちょっといやな予感が。」

艦長「デザインが寂しいので顔など描いてみました。」
  
スポット「やっぱり...」

航宙艦デザインへの道は遠し。

(次回に続く。)


第6話 ひと休み その2《キャラクタ紹介》

メインキャラの紹介です。

艦長 J.L.ホリデイ部長。そう、ホリデイの役職は部長 だったのです。
有能な艦長ですが、時々大ボケかまします。天然なのかわざとなのか 謎です。
趣味はピアノです。Coor'sのビールとダイージリンティーが大 好きです。
      
                 Mr.スポット 副部長。企業 コンサルタントで、ホリデイの会社への出向社員。
                 ホリデイの片腕です。下のイラ ストでは、作者の都合でなぜかメレンゲを泡立てています。
                 理屈っぽい性格です。
                                 

Ms.ミケ 有能なコンピュータエンジニアで、艦のメインコ ンピュータの基本設計は
彼女の手によるものです。美人でプライドは高いがちょっとお茶目な 面も。
艦長の直属の部下のひとりです。
  

                 Mr.フェリックス 機 械系エンジニア。火星テストプラント用ドームの設計者。
                 普段はお人好しですが、緊急時 には思わぬバイタリティーを発揮したりします。
                            

C53 53番目のマイクロマシン。第2話でエンターサプラ イズを危機に陥れます。
 ↓小さ過ぎてイラストを描けませんでした。
 .

(つづく)


第7話  エーデルワイス

   
火星のテラフォーム予備実験が失敗に終わり、ホリデイ艦長は事の次第を本社に報告して、
エンターサプライズ号は火星を後にした。
地球への帰路について1週間。地球の本社で協議の結果、エンターサプライズ号にある指令が出された。

艦長室。本社からの指令のメールに目を通す艦長。

 艦長「なんてことだ...」

しばらく考え込んだ末、Mr.スポットを艦長室に呼んだ。

 スポット「それでは、火星に戻るんですね。」
 艦長「そうだ。予備実験にも莫大な費用がかかっている。会社としてはそれを無駄にするわけにいかんそうだ。」
 スポット「必要器材や食料の補填はどうなるのでしょうか。」
 艦長「そこなんだが、我々が一旦帰還して、再度、別の者が出張するのでは、また同じだけの費用がかかる。
    そこで会社は資材と食料を載せた無人の船を出して、我々と途中で合流させる策を取ることにしたわけだ。」
 スポット「なるほど。資材と食料だけの船なら居住空間も生命維持装置も不要になるから大型艦より
    はるかに低いコストで済むわけですね。それに、無人なら加速度を上げられるからはるかに高速に航行でき る。」

 艦長「資材船とは8日後に合流する。部下全員への連絡と、食料、燃料、実験設備の各セクションへの指示を 頼む。」
 スポット「了解しました。」

艦内ラウンジバー”キャッツアイ”。

 マーク「帰ったら嫁さんと子供をディズニーシーに連れていくはずだったのに、しばらく帰れないってメール 出したら、
   そのまま火星人にでもなっちゃえば、って嫁さんに怒られちまったよ。おまえは気楽でいいよな、独りだし。」
 フェリックス「そんなにお気楽でもないですけど...奥さんと子供がいる方がうらやましいなあ。」
 マーク「それにしても何でまた戻らなきゃいけないんだ。」
 フェリックス「コストだけの問題のようですね。今回の事業では日本の会社と提携しているらしいですよ。」
 マーク「そうか。日本人の仕事のやり方はエグいからなあ。」

そう言いながらマークの飲んでいるのは八海山の冷酒である。

 マーク「ところで、明日は緑地化器材の点検だが、人員不足なんだ。手伝ってくれんか。」
 フェリックス「わかりました。明日は自分の仕事を早めに片付けてそちらに伺います。」
 マーク「助かるよ。」

緑地化器材の倉庫。

 マークとその部下「な、なんだこれは。」

倉庫一面お花畑だった。可憐な高山植物の数々が咲き乱れている。
遅れて現れたフェリックス。

 フェリックス「これは...花の咲く種子だけ開梱してある。よく咲かせたもんだな。」
 マーク「感心してる場合じゃない。艦長に報告だ。」

 艦長「まったく見事なもんだな。気圧と気温の低い火星に合わせて選んだ高山植物をこんなところで咲かせる なんて。」
 ミケ「すみません。管理部に聞いたらもう使わないから処分していいって言われて...」
 艦長「しかたがない。本社に伺いを立てた上でこのまま使おう。」
 ミケ「えっこれ使うんですか?」
 艦長「そうだ。花の咲く種はほとんど残ってないからな。」

本社もしぶしぶ了承、とりあえず花は咲いたまま火星に植え替えることが決定した。

8日が過ぎ、資材船とのランデブーポイントに到達した。慣性飛行を停止して、静止するエンターサプライズ 号。
資材船を取り込むために艦の先端が開く。

 ミケ「資材船捕捉。本艦からの誘導で減速中です。」

スクリーンに映し出される資材船。近づくにつれてしだいにその姿が大きく映る。
艦の先端から資材船が進入する。重々しい衝撃音とともに資材船の取り込みが完了し、艦長から指令が飛ぶ。

 艦長「食料、燃料、実験設備の各セクションはスポットの指示に従って資材を搬入。
   30分後にエンジン始動。進路は火星だ。」

資材船の食料の一部はすぐさま食料庫からラウンジバーの厨房に届けられた。厨房を覗くマークとフェリック ス。

 マーク「うひょ〜。峰の白雪に久保田。本社もいいとこあるじゃん。」
 フェリックス「マークさん、ほんとに日本酒好きですね。この間は日本人の悪口言ってたくせに。」
 マーク「それとこれとは話が別。日本酒ってのはワインと比べて複雑な味わいがあるんだ。わかるか?」
 フェリックス「は、はあ。」

マークとフェリックスの携帯通信機から艦長の声が。

 艦長「今回の業務についてのミーティングを行う。会議室に集合。」

会議室。スクリーンに映し出される前回のドーム周辺の写真。前回火星軌道上から撮影した映像だ。

 艦長「今回の着地点は前回と同じだ。倒壊した器材を極力流用する。また、今回資材船で届けられた
   器材には倒壊の原因となった酸に対して耐性のある補強材もある。火星上にある外壁の腐食部分を
   交換する。」
 マーク「ということは、今回は始めから誰かが地上に降り立つわけですね。」

 スポット「そうです。これから地上班のメンバーおよび詳細な作業内容について説明します。」

スクリーンが器材一式の表と図に切り替わる。

 スポット「まず資材船をシャトル代わりにして、器材と地上班を乗せて着陸します。
   前回打ち込んだプローブが現在も正常に地下水を汲み上げ続けているものと仮定して、
   ドームの外壁を補強材で修復して、ドームを建て直します。
   そのまま火星に泊まり込んで、次の日は種まきと、お花畑の花の移植です。
   ドーム内は植物の種類や土壌別に32の区画に分けられます。例えば各区画の仕様は図の右側が吸水性
   プラスチックを土壌に混ぜる16の区画、左側は火星の砂をそのまま使います。」

 マーク「資材船はシャトルよりも容量が大きいから器材がたくさん積めるけど、航宙用でしょ。シャトルの
   代わりになるんですか?」
 スポット「確かに。しかし今回本社から送られたのは日本製のハイブリッド型船で、推進システムの改造で
   シャトルにもなるんです。」
 マーク「さすが日本人。無駄がないな。」

 艦長「地上班のメンバーだが、マークとマークの部下3名全員。それに申し訳ないが、フェリックス、
   また行ってくれるか。」
 フェリックス「わかりました。」

ラウンジバー”キャッツアイ”。

 ミケ「また地上でお仕事ね、火星人さん。」
 フェリックス「しかたないさ。仕事だもの。それに今回はシャトルで着陸だし。」

 ミケ「あ〜あ、お花せっかく咲かせたのに。火星に持ってっちゃうなんて。」
 フェリックス「そう思って、ちょっと失敬してきちゃった。」

エーデルワイスの小さな花束を差し出すフェリックス。

 ミケ「まあ綺麗。艦長に見つかったら大変ね。でもありがとう!!」
 フェリックス「大丈夫さ。さっき聞いたばかりなんだけど、咲いた花のほとんどはバクテリアチェックを
   パスできなかったそうなんだ。だからそのまま艦内に残すんだって。」
 ミケ「そうなの。でも種の補填は?」
 フェリックス「資材船に入ってたって。量は少なめだけど。」
 ミケ「まあ。私の咲かせた花が火星で育つの楽しみだったのに...ちょっと残念。」
 フェリックス「(一体どっちが本音なんだ...)」
 ミケ「何か言った?」
 フェリックス「いや。何でもない。」

火星到着までの間に資材船をシャトルに改造する作業が進められた。推進装置の改造、空力系の点検、簡易生命 維持
システムの据え付け、etc.

地上での作業シミュレーションについては、プローブが機能していなかった場合等、数十通りものケース
スタディが行われたが、結局、軌道上から調査してシャトルの降下全日に再検討することになった。

そして、火星軌道上。

 艦長「周回軌道に入ってランディングポイントに到達したら前回打ち込んだ地上のプローブと交信して、
   今日までのデータログをダウンロードしてくれ。」
 ミケ「了解しました。」
 艦長「データを分析した結果で地上班の作業を決定する。彼等が地上に降りるのは火星を1周して再び
   ランディングポイントを通過する15時間後だ。」

会議室。

 艦長「分析の結果は?」
 スポット「地下水は安定して供給し続けています。水質、水量ともに変化ありません。
   ドームの様子は軌道上から撮影した映像しか手がかりがありません。ただ、幸い前回の砂中の酸は
   今回は蒸発して無くなっているようです。前回はプローブを打ち込んだ際に何らかの酸性物質を
   偶然掘り出してしまって、それがドームを腐食した可能性が高いですね。」
 艦長「なるほど。前回は自業自得だったというわけか。ということは酸性を想定した土壌の中性化プロセスは
   不要になるな。これで作業時間が大幅に短縮できる。問題はドームの方だ。」
 スポット「ビークルを含めてドームの構造材を全て地表に降ろしましょう。そうすればどのようなケースでも予定の
   2日間で作業が完了します。」
 艦長「わかった。準備班に連絡して全ての器材をシャトルに積み直すよう指示してくれ。」

軌道を1周して再びランディングポイント上空。

 マーク「では、出発します。」
 艦長「健闘を祈る。」

 ミケ「フェリックス、ちょっと待って。これを持って行って。」
 フェリックス「エーデルワイスのドライフラワーだ。何で?」
 ミケ「お守りよ。エーデルワイスの花言葉はね、”勇気と忍耐”なの。2日間の作業の無事を祈って。」
 フェリックス「ありがとう。心配ないよ。では、行って来ます。」
 ミケ「エーデルワイスに別の花言葉もあるの。」
 フェリックス「何?」
 ミケ「それなひみつ。」

資材船を改造したシャトルは、艦の先端から静かに出されると、スラスタを噴射してやがて艦の後方に消えた。
火星の大気との摩擦で真っ赤な炎に包まれる。ブラックアウトの後、艦からの誘導でシャトルは無事着陸した。

後部ハッチが開き、新しいドームの器材と植物の種子を積んだビークルに続いて、宇宙服に身を固めた5人が
地表に降り立った。倒壊したドームまでは約100m。

 マーク「艦長が日本酒は持って行くなって言うんだ。」
 フェリックス「当たり前じゃないですか。」
 マーク「いいじゃん、ちょっとくらい。」

ドームの近くまで辿り着いた。

 マーク「砂に埋もれてる。こりゃ、やっかいだな。」
 フェリックス「この上にドームを作り直すより、隣に作った方が賢明ですね。」
 マーク「そうだな。倒壊したドーム中央のプローブから給水パイプを引き出して、隣まで給水できるようにしよ う。」

マークとその部下3人は隣の平らな砂地にビークルを誘導して、新しいドームを建て始めた。構造材のアクチュ エータが
作動して、新しいドームが組み上がっていく。

フェリックスは給水パイプを引き出すために旧ドーム中央に向かった。無惨な外壁の残骸が砂のところどころか ら
見えている。中央は水たまりになっていた。前回フェリックスが下敷きになった梁の下には脱ぎ捨てた宇宙服が
半分砂に埋もれていた。

水たまりの近くには止まったままのビークルが、外壁の下になっていた。フェリックスはちょっと気になって
外壁を持ち上げてみた。

 フェリックス「まさか。」

そこには、ビークルを取り巻くようにして可憐な高山植物が生息していた。ビークルに積まれた種子のケースが 壊れて、
周囲に散乱したものが芽を出したのだ。

 フェリックス「これは...」

ビークルの傍らには一輪の...

地上班は全ての作業を終えて無事帰還した。ドームには隣の旧ドームのプローブから給水され、種子が蒔かれ た。
また、旧ドームで見つかった植物の一部は新しいドーム内に移植され、残りは研究用サンプルとして艦内に回収され た。

ラウンジバー”キャッツアイ”。作業成功の打ち上げパーティである。

 艦長「え〜、この度の成功は...まあいいや。乾杯!!」
 一同「乾杯!!」

 フェリックス「見せたいものがあるんだ。」
 ミケ「何?」

フェリックスは1枚の写真を取り出した。そこに写っていたのは、あの時地上でビークルの傍らに咲いていた
一輪のエーデルワイスだった。

 フェリックス「火星で咲いていたんだ。」
 ミケ「じゃあ、新しいドームに植えかえたのね。咲かせたのはあたしじゃないけど、火星で花を咲かせる願いは叶っ たわ。」
 フェリックス「火星での”大切な思い出”になったかな?」

そう言って、フェリックスはマークと歓談しに行ってしまった。

ミケは微笑みながらそっとつぶやいた。

 ミケ「知ってたのね。もう一つの花言葉が”大切な思い出”だって。」

(次回をお楽しみに!!)



第8話 月
    (BGMはクロード・ドビュッシー”月の光”です。MIDIは流れません。自分でピ アノ弾いてね。)

地球帰還まであと1週間。最後の軌道修正を行って、エンター サプライズは進路を一路地球に向けた。

 ミケ「最近ずっとメインコンピュータの前に座ってどうした の?」
 マーク「パソコンばかりやってると体に良くないらしいからね。」
 ミケ(それでメインコンピュータいじってちゃ意味ないじゃ ん...)
 マーク「固まらないでよ。冗談だってば。」
 ミケ「ところで何これ、エンターサプライズの設計図じゃない。」

メインコンピュータのスクリーンに精緻な3Dグラフィクスで 表示されるエンターサプライズの図。

 マーク「そう。ブリッジから軌道修正時の進路にずれが出て るって報告があったんだ。
   エンジン出力の履歴は再三のチェックの結果、異状はなかっ た。船体の質量分布が設計値と
   異なるんじゃないかって。最近のエンジン軌道時の記録とシ ミュレーション結果のずれから
   船体の設計図と実際の構造との間にずれがある部分を計算し て、特定しているところなんだ。」
 ミケ「で、わかったの?」
 マーク「いや。もう少しかかりそうだ。エンジン出力の調整は、艦 内の乗員や物の配置の変化を
   1ミリ秒単位で計測して補正している。シミュレーションには 乗員や物の動きを含めた膨大な量の
   データ入力が必要なんだ。それに、設計図と実際の構造との間 のずれなんて今まであるとは思わなかった
   から、ずれを計算するプログラムは今回のために部下に作って もらった。それは良かったんだが、
   プログラムに若干不具合が残ってるようで、部下に修正しても らってはやり直してる。」

場所は変わってフェリックスの部屋。

 フェリックス「今日は早めに仕事が片付いた。DVDでも見 よう。タイトルは”メノノケ姫”。
   ♪張りつめた〜弓の〜、震えるピアノ線〜ってか? う〜 ん、”となりのどーも”にしようかな。」

どうでもよいことだが、フェリックスは音痴だった。
と、自動ドアがあいて、突然マークとその部隊がなだれこんできた。

 マーク「フェリックス、お休みのところすまんが床を調査さ せてもらう。」
 フェリックス「は、はい。」
 マーク「磁気センサで床全体を調べろ。おまえはこっち。おまえは そっち。」

 部下「ボス、設計値と合いません。」
 マーク「ボスって呼ぶな。それより、やはり思ったとおりだ。」
 フェリックス「一体何の話ですか?」
 マーク「最近、軌道計算にずれが出ていて、何度もやり直している のは知ってのとおりだが、
   その原因がこの部屋の床と、その外の外壁にあるんだ。設計値 と構造との間に全体で0.3%もの
   ずれが生じている。」
 フェリックス「軌道修正は設計値をモデルにするので軌道にずれが 出るんですね。」
 マーク「そうだ。材質に問題があってこの場所に歪みがあるのかも 知れん。部下に詳しく調べさせよう。」

X線による詳細な調査の結果、フェリックスの床にもともと金 属疲労のある材料が使われていたことがわかった。
艦長室。

 マーク「床が構造をささえきれずに変形して、外壁にしわ寄 せが行ったようです。外壁も本来床と分担するはずの
   応力を過剰に受けて変形したようです。」
 艦長「このままでは航行に支障が出るな。」
 マーク「床はともかくとして、外壁は船外活動での修理が必要で す。」
 艦長「作業ロボットの出番だな。それと、床板の不良原因の調査も 頼む。」
 マーク「了解しました。」

艦長室を後にするマーク。
そこへ本社からの指令メールの着信音声が入った。

 艦長「月に寄り道してくれってことか。月面支社の駐在要員 を拾って地球まで乗せていけばいいんだな。
   駐在要員はと。何だって!! 支社長フィオリーナ!! なん てこった。」

艦長の表情は複雑だった。

新装開店ラウンジバー”ムーンライト”。
スクリーンに映し出される月。

 フェリックス「何で月を見ながら酒を飲むんですか。」
 マーク「風流ってもんよ。」
 ミケ「日本人の文化ね。ちょっと神秘的だわ。」
 フェリックス「そうかなあ。僕にはよくわからないけど。」

 スポット「私もご一緒していいかな。」
 ミケ「どうぞどうぞ。」
 フェリックス「スポットさんがラウンジバーに来るなんて、珍しい ですね。」
 スポット「今回は出番が少ないんで、この辺りでそろそろセリフを 入れておかないと。」
 一同「....」
 スポット「冗談だよ。ホントはね、今回火星のプラントが成功した んで契約が縮まったんだ。」

スポットは企業コンサルタントで、5年間の出向中である。

 スポット「契約はあと2年残ってたんだが、地球帰還と同時 に出向解除になる。契約金は成功報酬なので
   5年分と同じ額もらえる。」
 ミケ「まあ、あと1週間でお別れなんですね。寂しいわ。」
 マーク「帰還したら送別会を開こう。盛大に。」
 フェリックス「賛成!!」
 スポット「みんなありがとう。」

いつの間にか月に近付き、スクリーンの月もよりいっそう大き く明るく輝いていた。

やがて月の周回軌道上に乗るエンターサプライズ。

 艦長「マーク、床と外壁の工事は月を周回中に済ませておい てくれ。私とミケはシャトルで月面に降りる。」
 マーク「了解しました。」

フェリックス部屋の床側の工事が終わり、作業用ロボットによ る外壁の工事が始まった。
作業ロボットの構造設計はフェリックスの手によるものである。ま た、本艦でのオペレータの適任者は彼自身である。
HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を装着するフェリック ス。画面に作業用ロボットのカメラからの映像が
立体表示される。作業ロボット”マンダム”は無線による完全遠隔操 作の無人ロボットだった。もちろんフェリックスは
船外に出ることなく作業用ロボットを操作できる。

 フェリックス「左側マニピュレータのチェックOK。次ぎは 右側のチェック...OK。走行系異常無し。
   では船外に出ます。アムロ、行きま〜す!!」
 mnakata「すみません。一度やってみたかったので。」

外壁が開いてロボットが競り上がってくる。外壁を走行して目 的地まで行くロボット。HMDには船外の様子が
映し出されている。

一方、月にはただ周回に来たわけではない。本社の指令で雑用 をことづかったのだ。
月面の支社は普段は無人だが、たまたま支社長のMs.フィオリーナ が来ていた。本社はフィオリーナを
地球からのシャトルを出すよりも、エンターサプライズでついでに 拾ってもらう方が経費の節約になると
判断したのだ。

エンターサプライズが月面に着陸するわけにも行かないので、 火星用シャトルを再び航宙仕様に改造して、
月までフィオリーナを出迎えに行くことにした。

 艦長「フィオリーナの出迎えは私とミケで行く。留守中、本 艦を頼む。」
 スポット「了解しました。」

シャトルは支社から少し離れたシャトルポートに着陸した。 シャトルから支社まではカートで20分程である。

 ミケ「あら、あれは何?」

少し遠くに、巨大な漆黒の直方体が岩のように立っていて、宇 宙服の人が周囲を取り囲んでいる。

 艦長「モノリスだ。」
 ミケ「そうか。今年は2001年だったのね。我々は調査しなくて いいんですか?」
 艦長「放っておけ。彼等と関わりあうとディスカバリ−号で木星ま で行かされるはめになってしまう。」
 ミケ「はあ...」

てなことを言っている間に支社のエアロックに着いた。カート ごと中に入る。入り口が閉まると中が空気で
満たされ、室内側の扉が開く。

 フィオリーナ「ようこそ、月の都へ。」
 ミケ「はじめまして。エンターサプライズのミケです。」
 艦長「やあ、久しぶりだな。」
 ミケ「あら、お知り合いだったの?」
 フィオリーナ「あら、そうだったかしら。」
 艦長「相変わらずご挨拶だな。」

フィオリーナは艦長のかつての恋人であり、仕事上のライバル でもあった。

 艦長「ここへはよく来るのか?」
 フィオリーナ「ええ。もう5度目よ。支社といっても私と部下を含 めて組織はたったの10人。
   私も支社長とはいえ、こうして作業を担当することもある の。」
 ミケ「大変なんですね。」
 フィオリーナ「着任した時はホリデイに勝った!と思ったわ。でも 彼の部下は50名。それに
   航宙艦の艦長にまでなって。」
 艦長「未だにライバ意識を持ってたなんて。それに私は地上勤務が 希望だったのに、文字どおり
   飛ばされてしまったんだよ。」
 フィオリーナ「何言ってるの。これはオフレコだけど、火星での臨 機応変な対応が認められて、あなたと部下全員には
   社長表賞が待ってるのよ。ちゃんと報賞金も出るんだから。」
 艦長「.....」

 ミケ「フィオリーナさん、まだ少し時間があるので、ここで の研究成果を見せていただけますか。」
 フィオリーナ「...そうね。いいわ。」

フィオリーナのラボに案内される艦長とミケ。

その頃エンターサプライズ号ではマークが、エンターサプライ ズの建造記録を地球のデータベースからダウンロードして、
床板の不良原因に辿り着いていた。

床板は材料のロットが変わって1枚だけ別のメーカが製造して いた。当時のエンターサプライズの設計主任は
フィオリーナだということもわかった。

 マーク「果たして艦長に今知らせるべきか。」

一方、我らがフェリックス君は、HMDの映像情報だけをたよ りに、作業用ロボットを操縦していたので、船外でロボットを
迷子にさせかけながら、悪銭苦闘の末、どうにか目的地まで辿り着い た。

 フェリックス「こんなことならナビゲーションシステムを付 けておくんだった。それよりまず外壁をはずさなきゃ。」

付属の工具でボルトが次々とはずされ、歪んだ外壁がすこしず つ浮き上がってくる。

 フェリックス「飛んでいかないように押さえてと。最後のボ ルトだ。」

ロボットは船体に磁力でへばりついており、ロボットのマニ ピュレータにもまた電磁石がついている。
マニピュレータで重い外壁をゆっくりとはずして持ち上げる。周回軌 道上では無重力であるが、作業ロボットの現在位置は
フェリックスの部屋の外壁、即ち冒頭のイラストの円環部分なので、 重力を作るために回転している。
ロボットには1Gの外向きの遠心力がかかるので、作業は慎重を要す る。外壁を放したら周方向に飛んで行ってしまう。

 フェリックス「左側マニピュレータがはずれかかっている。 このままでは外壁を飛ばしてしまう。
   そうだ。さっきはずしたボルトでロボットを固定してしまお う。」

ロボットは電池駆動なので電磁石の出力には限界がある。そこ で外壁をボルトでマニピュレータに固定してしまうという
荒技だ。
固定はうまく行き、ロボットは外壁を担いで出入り口より回収され た。

月面では、フィオリーナがラボの器材と成果を説明していた。

 ミケ「じゃあ、月資源の活用と月面上での加工が行える目処 がついたんですね。大きな成果だわ。」
 フィオリーナ「ありがとう。地味な研究なので世間の評価は高くな いんだけど。」
 ミケ「このままうまく行けば、将来は月面の資源だけで宇宙ステー ションや宇宙船の生産が可能になるんですね。」
 フィオリーナ「そう願いたいけど、実用化にはまだまだ課題が山積 み。」
 ミケ「でも予算は増やしてもらえるんでしょう?」
 フィオリーナ「予算よりも人が欲しいところなんだけど。」

 ミケ「他には研究は?」
 フィオリーナ「私の担当ではないんだけれど、植物プラントがあ る。こっちよ。」

横型のドラムが回転して、中に水耕栽培の植物が並べてある。 遠心力で植物に重力を与えているわけだ。
となりには野方図に伸びた植物が置いてある。

 フィオリーナ「こちらにあるのは重力なしの植物。やはり生 育が良くなくて。」

 ミケ「花は育てないんですか。」
 フィオリーナ「花粉が飛散して他の機器に入り込む可能性があるか ら。なるべく使わないようにしてるの。」
 ミケ「なるほど。」

 フィオリーナ「あと、金魚も飼ってるの。」
 ミケ「おいしそう。」
 フィオリーナ「えっ?」
 ミケ「なんでもない、なんでもない...」

そう、キャラクターはネコという設定なので...

 フィオリーナ「地球から持って来た金魚は重力の小さい月面 上ではちゃんと泳げないの。かわいそうだから
   私と一緒に連れて帰るつもり。でもね、こっちで生まれた金魚 はちゃんと泳げるのよ。不思議ね。」
 ミケ「ふう〜ん。面白いですね。」

艦長の携帯通信機からマークの声。

 マーク「艦長、お話が。」

となりの部屋に移って、マークからエンターサプライズ床板不 良の件はフィオリーナの責任であることを耳にする艦長。
艦長は悩んだ。

 艦長(ここで私が目をつぶればことは簡単だ。しかし本社の 調査が入ってもしバレたら、
   フィオリーナは何て思うだろう。きっとライバルである私に同 情されたと思ってプライドを傷つけられたと
   思うに違いない。かといって原因が明るみに出たらせっかくの 支社長から彼女は間違いなく降格だ。)

 艦長「ミケ、話の途中すまんが、彼女に話がある。フィオ リーナ、こっちに来てくれ。」

エンターサプライズ号では、フェリックスが交換用の外壁をロ ボットに担がせて、再びロボットを走らせていた。

 フェリックス「今度は迷子にはならないぞ。」

今度は首尾よく運んだ。新しい外壁を取り付けて、ロボットは 無事に船内に回収された。
通信機で艦長に報告するフェリックス。

 フェリックス「艦長、船体の修復を完了しました。」
 艦長「そうか。ありがとう。スポット、ブリッジに連絡して軌道修 正シミュレーションテストを行って
   ずれが無くなっているかどうかを確認しておいてくれ。我々は 今から船に戻る。」
 スポット「了解しました。」

ミケ、艦長、フィオリーナを乗せてシャトルはエンターサプラ イズに向かった。

艦長室。スクリーンに映る青く美しい星、地球。

 フィオリーナ「エンターサプライズは今はあなたの船なの ね。」
 艦長「そう。軍の払い下げ品だ。君が建造に携わっていたなんて知 らなかった。」
 フィオリーナ「まだあなたと知り合う前の仕事だもの。それに、当 時のサプライズ社の規模では大形の
   航宙艦の全体の建造はとても無理で、居住区のみわが社が担当 したの。」

 フィオリーナ「それより軍艦だから艦長なのね。船長ではな くて。」

そうだったのか。mnakataも知らなかった。
エンターサプライズのオーナであるサプライズ社は、宇宙事業のベン チャーで、もともと宇宙ステーションの
内装機器を手掛けていた。事業が拡大して、月面での工場生産や火星 のテラフォーム等の試験プラントを
事業として立ち上げるまでになった。試験プラントとその成果のクラ イアントは国家である。
サプライズ社がエンターサプライズを安く仕入れたのも、国家との日 頃の商売上のつき合いからだった。
エンターサプライズは、軍艦の内装を、サプライズ社の技術を活かし て改装して作られた船だった。

 フィオリーナ「ねえ、この船だけど、今後は地球の静止軌道 上に置いて宇宙ステーションにするらしいわ。
   それだけじゃなくて、火星に行った船として入場料を取って一 般公開するそうよ。」
 艦長「会社も抜け目ないな。今度は民間事業にも手を染めるってわ けか。」

 フィオリーナ「帰ったら降格ね。また部長からやり直し。」
 艦長「すまんな。」
 フィオリーナ「あなたのせいじゃないわ。それに今後は月まで通わ されることもなくなるし、ちょっぴり
   感謝してる。」
 艦長「.....」

 フィオリーナ「ところで奥さんは元気?」
 艦長「ああ、子供も2人いる。君の方は?」
 フィオリーナ「仕事仕事で別れ話も出てたんだけど、降格したら時 間もできるし、もう一度話し合ってみるつもり。」
 艦長「よかった。」

ブリッジからの通信。

 スポット「周回軌道に入ります。」

艦長室のスクリーンいっぱいに広がる地球。

 フィオリーナ「この眺めも当分見納めね。」
 艦長「そうだな。」

乗員全員がシャトルに乗り込む。さすがに50名と荷物が一杯 で窮屈だ。エンターサプライズのメインコンピュータが
自動で作動して、シャトルを送りだす。シャトルのエンジン点火と同 時にシャトルの視界から次第に遠ざかる
エンターサプライズ。

 フェリックス「あの船、狭くて暮らしにくかったけど、いろ いろいい思い出ができたよ。」
 ミケ「そうね。さようなら、エンターサプライズ。」

(Space Holiday おしまい)



第9話 おまけ1

キャラクタの名前の由来

 J.L.ホリデイ艦長   J.L.はスタートレックThe Next GenerationのJean Luc(ピカード)艦長から

 ミケ        単にミケ猫から。でもイラストは無地です。

 フェリックス    ワーナーのアニメのネコかと思いきや、メンデルスゾーンのファーストネームから。

 マーク       最初はゲストキャラのつもりだったので適当につけた名前です。

 スポット      Mr.スポックかと思ったら、スタートレックThe Next Generationでアンドロイドのデータ少佐の
           飼っているペットのネコの名前から

 タマ        名前は思い付きです。第4話以降も登場させるはずでしたが、すっかり忘れていまし た。

 フィオリーナ    HP(ヒューレット・パッカード)のCEOの名から。彼女はパソコン事業の失敗では 随分たたかれて
           いましたが、最近ではコンパックを買収する等、意気盛んです。



第10話 おまけ2

科学的考証

 火星までどのくらいかかる?
  NASAのバイキングは火星まで片道2年かかっています。
  現在理論的に考えられている航法で、電磁波によってプラズマを閉じ込めて、宇宙船のまわりに直径20kmもの
  巨大な帆を張って、太陽風でヨットのように飛行する方法があります。もし実現すればフライバイ航法(惑星の
  運動エネルギーで加速する方法)を使って高速航行する、あのボイジャー1号よりも速く航行できるそうです。
  Space Holidayでは片道半年で、往復1年で戻ってきますが、そのヨット風の航法でそこまで高速化できるか
  どうかまでは計算したわけではありません。

 火星の周回軌道
  スペースシャトルは1時間で地球を1周するのを思い出しました。となると、Space Holidayで火星を19時間で
  1周するというのは長過ぎです。火星の直径は地球より小さいので。

 テラフォーム
  緑地化計画は各国で考えられていますね。10万年かけてじっくりと人類の住める星にするとか、核ミサイルで
  火星の南極の氷をとかせばもっと早く住めるとか、日本の研究では火星全体を対象にすると時間がかかるので
  火星にドームを作ってその中だけに植物を植えようとか。Space Holidayのストーリーはドーム内に植物を
  植える方法をモチーフにしています。

 平和な?ストーリー
  Space Holidayにはエイリアンも宇宙戦争も出てきません。現実的な話をベースにしても結構スリリングな物語が
  書けるんじゃないかって思って書いてみました。
  私はとあるメーカに勤めていますが、設計の毎日は喜びありトラブルありで、意外と刺激的なんです。
  そんな日常をそのまま宇宙に持って行けば面白い話になるのでは?と思って。設計や故障といった細かい話から
  本社に逆らえない艦長、上司と部下の上下関係、どれもサラリーマンのごくありふれた日常の1コマです。
  エンターサプライズでは長期出張でしかも宇宙という隔離された場所ですが、私の勤める会社のとある地方の
  研究機関では、潜水艦勤務というのが現実にあるそうです。潜水艦向けの設備のフィールドテストのために、
  設計者は単身赴任で何ヶ月も潜水艦に乗せられますが、軍事機密のため寄港地を一切明かされず、ずっと艦内に
  缶詰めだそうです。家族にも一体今どこにいるのか知らされません。現実はSpace Holiday以上に過酷です。
  でも潜水艦手当てが出るらしい。

 最もおかしなところ
  もし人類がエンターサプライズ号と遭遇したら、こう言って驚くでしょう(^^;)。
  「ネ、ネコが言葉をしゃべった!!」

(今度こそ おしまい。 第2シーズンに続け!!)



スペースホリデイのお話は、もともとエンターサプライズが火星まで往復するだけの話なので、この辺りでネタ切れで す。
次回はSpace Holiday 2 の予定です。同じキャラクターに加えて新キャラも登場の予定。


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