私的好物 [COMICS]

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■ 一覧


■ BANANA FISH

吉田秋生(小学館)

ニューヨークの下町のストリートチルドレンの生き様を描いた傑作。「ストリートチルド
レン」という生き方しか選べずグループのボスとなった「アッシュ」が、日本からやって
来た「英二」と出会い、自分の兄を殺した「BANANA FISH」の謎を一緒に追い
かけて行く中で、人間らしい感情を取り戻す物語である。

こうして書くとよくある話のようであるが、アメリカ政府も巻き込んだ麻薬による陰謀や
ベトナム戦争の話も交えた吉田秋生のストーリーテリングの上手さや、アクションシーン
のリアルな描画が、読み始めた者をラストまでぐいぐい引っ張って行く。

「君は一人じゃない ぼくがそばにいる ぼくの魂はいつも君とともにある。」

英二の手紙の言葉とともに語られる衝撃的で美しいラストシーンでは、誰もが涙を流さず
にはいられないだろう。


■ 行け!稲中卓球部

古谷実(講談社)

この漫画が連載されていたころ、勤めていた会社で仕事に行き詰まっていた。月曜日に掲
載誌が発売されていたので、それを通勤途中で買って読んで会社に行く気になっていたと
言っても大げさじゃないギャグ漫画の傑作。古谷実独特のギャグが冴え渡る。

特に主人公の前野が生み出す数々のシュールな笑いは、朝の通勤電車の中で、何度声を出
して笑いそうになったかわからない。連載後半で息切れしたのか急に終わってしまったが、
今後の新連載も見守りたい漫画家の一人である。


■ 火の鳥

手塚治虫(角川書店、朝日ソノラマ、講談社など)

誰もが知っている手塚治虫のライフワーク。私ごときが手塚治虫を評するのはおこがまし
いが、私的好物のため容赦いただきたい。

手塚治虫は日本が生んだ20世紀最大の物語作家である。その作品は漫画という世界だけ
でなく、あらゆるメディアで表現された創造物を凌駕している。現在でも評価は高いが、
今後ますます上がっていくだろう。

本書は過去から未来へ、未来から過去へ輪廻のようにストーリーを繰り返しながら、生命
の根源を問う物語である。年を重ねて読むごとに、その中から読み取れるものが変化して
いく。これほど読み応えの有る本はない。もし無人島に何か一つだけ持っていく本がある
とすれば、この本以外ありえない。


■ エリア88

新谷かおる(小学館)

私が高校生の時に夢中になった傭兵の物語。親友に裏切られ中東の小国の傭兵になってし
まった風間真が、ついに復讐を遂げることに成功する。何よりも新谷かおるの描く戦闘機
のかっこ良さに憧れてしまった。

連載初期の頃は松本零士の影響を受けているが、後半は現在の作風に近くなっている。こ
の漫画も数々の泣かせるセリフがかっこいい。人殺しにならざるを得なかった優しさと、
それでも生きるためにやはり人殺しをせざるを得ない人間達。

私は問題の解決方法としての戦争を絶対認めない。だがその狭間におかれ選択を迫られた
人間のドラマは、何かを考えずにはいられない。


■ アタゴオル

ますむら・ひろし(メディアファクトリー)

怠け猫ヒデヨシとその仲間達が彩るアタゴオルの世界。ますむら・ひろしが描く柔軟な
発想にはとても驚かされる。基本的には時間、金、人間関係に追われる現代社会への批
判を基調としているが、さもすればよくある御伽噺になりかねない物語を味わい深い作
品に仕上げているのは著者の力によるものといえるだろう。

全体的なイメージは宮沢賢治へのオマージュを元にしているが、その独特な世界観は銀
河鉄道の夜を基調にして、著者独特の不思議な明るさとユーモアあふれる読んでいるだ
けで精神が癒される作品になっている。

この作品を読んでいると、どこからか不思議な音楽が聞こえてくるような気がする。そ
れは自分の心の中にある音なのかもしれない。


■ ドラゴンヘッド

望月峯太郎(講談社)

修学旅行の帰りの新幹線の中で、大災害に出会ってしまった中学生の「テル」と「アコ」。
同じ新幹線で生き残ったのは、三人だけ。しかし「闇」という恐怖に取りつかれた「ノブ
オ」と殺し合いが始まってしまう。

この話の連載が始まったのは、阪神大震災が起こったほんの少し前であった。現実の大地
震で起こった様々な混乱状況が、不思議なほどにオーバーラップしており、この物語を描
いた望月峯太郎の筆致の冴えが素晴らしい。

人間は誰しも心の中に「恐怖」という感情を持っている。それは生きるために必要なもの
だ。しかし「恐怖」は悪意を持った人間に悪用される。デマなどにより煽動され、自分の
恐怖を封じこめるために自分自身が他人の恐怖となるのである。

自分の中の「恐怖」とどのように向き合えるか、それは非常に難しい問題である。しかし
一時的には自分自身をごまかして逃げることができても、最後にはつかまってしまうだろ
う。「恐怖」は自分の中に住んでいるからである。


■ 哭きの竜

能條純一(竹書房)

数々の決め台詞が泣かせるマージャン劇画の傑作。能條純一独特の劇画美が秀逸である。
主人公・竜の「命を刻む」鳴きが周りの人間の人生を変えていく。またその他の登場人物
も圧倒的な存在感を持っている。甲斐、石川の竜をめぐる争い、特に甲斐の最後は見事で
ある。

私と同年代で麻雀をやったことがある人なら、必ず皆読んでそのセリフを卓上で言った事
がことがあるはずだ。「あんた背中が煤けてるぜ。」


■ 1・2の三四郎

小林まこと(講談社)

私が中学生から高校生の頃、読み耽っていた熱血格闘コメディ。プロレスが本当に面白か
った頃の話である。この頃の小林まことのギャグのセンスは抜群で、今読んでも十分面白
い。熱血的な格闘技シーンの合間に挟まれるボケが可笑しくてたまらない。漫画でしか表
現できない独特の笑いの間が素晴らしい。

昔のプロレスは本当に良かったと思う。K1とかPRIDEとかも嫌いじゃないけど、同
じ脚本があるにしてもショーとしての面白さは、昔のプロレスの方が上だったとつくづく
思う。


Copyright © 1999-2002 つり平

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