晴耕雨読 (日々の本読み) 2000年2月

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輝ける日々へ
テレンス・ファハティ(ハヤカワ・ミステリ文庫)

お勧め度:

「50年代の古き良き時代のアメリカを舞台にした、傑作ハードボイルド」とのことだが、
別にそれほどの作品ではない。話のテンポも50年代というのはいただけないし、この程
度の話にしては長すぎる。また最後の謎解きも多重人格という救い様のない結末。
(2000.02.24)

この国のかたち 六
司馬遼太郎(文春文庫)

お勧め度:

司馬遼太郎の日本人への遺言である「この国のかたち」もこの巻で最後である。この本を
読むと、難しい事を判りやすく書くことの本当の難しさが良くわかる。よくある難しい文
章は、一見すると書くのが難しく思うが実は簡単である。カタカナ言葉や難しい漢字を並
べて、もっともらしい事をひねくり回して書くとああいった文章になるのである。
(2000.02.20)

精神病を知る本
別冊宝島編集部(宝島社文庫)

お勧め度:

精神医学という精神病の治す手段を否定した本。部分的にはなるほどと思わせるところも
有るが、全体的には言葉をもてあそんでいる感じがする。特に登校拒否について書かれた
章は、既に古びた論理を持って回った言い方で記述している。現在の学校教育を否定する
事には私も賛成できるが、この文章はこれでもかというほど権威主義に満ちている。
(2000.02.18)

セッション −綾辻行人 対談集
綾辻行人(集英社文庫)

お勧め度:

「新本格派」綾辻行人の対談集。最近、綾辻の本が出版されないと思ったら。スランプに
陥っていたらしい。やたらと本のジャンルにこだわっている。しかし、いみじくも対談集
の中の一人が語っているように、本の評価は一つしかない。好きか嫌いか(面白いか面白
くないか)である。
(2000.02.15)

グイン・サーガ70 豹頭王の誕生
栗本薫(ハヤカワ文庫JA)

お勧め度:

いよいよ「豹頭王の誕生」である。このシリーズは最初から100巻完結の予定で始めら
れたのだが、最初から途中のポイントとなるタイトルがいくつか発表されていて、「豹頭
王の誕生」はその一つである。ここに来て物語もいよいよ後半に入り、全体的に話が動き
出してきた。
(2000.02.13)

ダーティホワイトボーイズ
スティーヴン・ハンター(扶桑社ミステリー)

お勧め度:

視点を変えながら物語を進めるところは「極大射程」とよく似ている。主人公が最初と最
後でがらりと入れ替わる。最初は悪人側が主人公なのだが、後半はヒーロー側が主人公と
なる。ただ「極大射程」と比べると無いようは今一つ。それに分厚すぎ。700頁以上有
るのだから、上下巻に分けて欲しい。
(2000.02.9)

死者の河を渉る
ロバート・クレイス(扶桑社ミステリー)

お勧め度:

クレイスの3年半振りの新作。面白い。それだけでも良いのだが、中身の話を少しだけ。
今回の話はルイジアナが中心となっている。相変わらず軽口を飛ばしながら、エルヴィス
が過去の犯罪と現在の犯罪を、シンクロさせながら解決していく。いつもより幾分饒舌な
パイクも健在である。この本を読むとユーモアというものの本質がよくわかる。また高橋
恭美子氏による翻訳もよい。
(2000.02.4)

Copyright © 1999-2000 つり平

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