晴耕雨読 (日々の本読み) 2000年4月

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リモコン変化 SFバカ本
岬兄悟・大原まり子編(廣済堂文庫)

お勧め度:

SFバカ本シリーズの最新刊。前作の読後感想でパワーダウンしたと書いたが、この作品
集では復活している。特に「フロム・オヤヂ・ティル・ドーン」が秀逸。また他にもエロ
ティックな作品や本格SF。そして老人問題をSF的に捉えた作品など多岐に渡る題材を
面白く描いている。SF嫌いの人も是非一読を。
(2000.04.30)

パーフェクト・ブルー
宮部みゆき(創元推理文庫)

お勧め度:

宮部みゆきの処女長編。元警察犬の目から語られている推理小説。ストーリーや謎解きの
部分にご都合主義が多々見られるのは、若書きだから仕方が無いだろう。しかしながら読
む者を引き付ける所は、この作品にも良く顕れている。
(2000.04.28)

クラッシュ
楡周平(宝島社文庫)

お勧め度:

インターネットを利用したいわゆるサイバーテロの物語。男に捨てられた女がインターネ
ットを介してコンピューターウィルスをばら撒き、世界中に混乱を巻き起こす。物語とし
てはテンポ良く進められており、スムーズに読み進めることが出来た。ただ肝心のサイバ
ーテロの部分があまりにも出鱈目で、現実的には起こり得ないようなことを書いているの
が少し興醒めする。
(2000.04.25)

ハンニバル
トマス・ハリス(新潮文庫)

お勧め度:

「羊たちの沈黙」の続編。前作でも活躍したクラリス捜査官が窮地に追い詰められた時、
逃亡していたレクター博士が動き出す。そして彼により身体障害者となった被害者も。ま
たそれによって利益を得ようとする者たちも。それぞれの思惑が絡み合い、舞台はアメリ
カからイタリア、そしてまたアメリカへと移り変わりゆく。前作を凌ぐ心理サスペンスと
の評判は嘘ではない。少し長いが最後まで一気に読めた。ただ少し過激な場面があるので
気の弱い人は止めた方がいいだろう。
(2000.04.22)

六道が辻 ウンター・デン・リンデンの薔薇
栗本薫(角川文庫)

お勧め度:

六道が辻シリーズ第二弾。今回も大道寺家の悲劇を描いた大正ロマンである。耽美的な内
容で、女のどろどろとした情念が描かれている。
(2000.04.20)

魔術はささやく
宮部みゆき(新潮文庫)

お勧め度:

幼い頃に父親が犯罪を犯して逃亡してしまい、町の人に差別され、固い芯を持つようにな
った少年が出会った不思議な殺人。サスペンスだけに内容は書かないが、宮部みゆきの筆
致の冴えが素晴らしい。少年の心を巧みに描き出し、ぐいぐいと読者を話に引き込んで行
く。
(2000.04.18)

戦争を演じた神々たち[全]
大原まり子(ハヤカワ文庫JA)

お勧め度:

日本SF大賞を受賞した作品とその続編を合わせた連作短編集。大原まり子独特の残酷な
がらも優雅でユーモアに溢れた文章を、肉を殺ぎ落としたシンプルな美しい文体で描いて
いる。同じ主題を視点を変えながら、繰り返し描かれるこの作品は間違い無く作者の代表
作であろう。この本は凡百の文学作品よりも遥かによい小説である。しかしながらSFと
いうことで評価が低いのが残念だ。まるで詩のように美しく描かれる物語を是非一度読ん
でいただきたい。
(2000.04.16)

片雲流れて
風間一輝(幻冬舎文庫)

お勧め度:

武道家達が戦い合うハードボイルド。やや青臭い表現が気になるが、まあ大学生が主役の
一角を占めているため仕方が無いだろう。読んだ後には爽快感が残る。それより驚いたの
は作者が昨年末に亡くなっていた事だ。なかなか気に入っていた作家だったので残念であ
る。
(2000.04.12)

赤い鶏
シャーロット・カーター(ミステリアス・プレス文庫)

お勧め度:

ストリート・ミュージシャンの女性サックス吹きが、ふとした事で殺人事件と関わり合う
ようになり翻弄されながら犯人を追い詰めて行く。通常の探偵物と違って、犯人を追い詰
めるわけではなく、何となく調べて行くうちに物語が展開していく感じでストーリーは進
められる。
(2000.04.10)

悪党パーカー/エンジェル
リチャード・スターク(早川文庫)

お勧め度:

罪の無いクライムノベル。淡々とした口調で語られるハードボイルド。出てくる人物もほ
とんど感情を表さない。でもそれでよいのだろう。
(2000.04.08)

本所深川ふしぎ草紙
宮部みゆき(新潮文庫)

お勧め度:

こういう方面の本も書いているんだなあと感心した。人情捕り物である。やはり作者は才
能がある人という感じがする。物語の内容としてはそれほどでもないが、人の心の動きを
良く描いていると思う。
(2000.04.06)

サンセット大通りの疑惑
ロバート・クレイス(扶桑社ミステリー)

お勧め度:

ちょっとでれでれモードのコールである。前作で知り合ったルーシーとより一層親密にな
っていく。今回の相手は大金に目がくらんで、不正を働く弁護士である。最後には小癪な
弁護士をやっつけるのであるが、現実にはこうはいかないだろうから余計痛快である。し
かしアメリカに住んでいて訴えられたら、金が無い限り勝てないような気がする。また金
があっても、タバコ会社のように負けたら莫大な賠償金を払わないといけないし。やはり
とても住みにくい国のような気がする。
(2000.04.04)

友と別れた冬
ジョージ・P・ペレケーノス(ハヤカワ・ミステリ文庫)

お勧め度:

他の作品にも脇役として出てくるニック・ステファノスが私立探偵として活躍する物語。
硬質なハードボイルドである。まともな生活ができず酒におぼれていくニックが、昔の
友人に仕事を依頼されるが...。ノワールの雰囲気が漂う探偵小説の傑作である。
(2000.04.02)

スナーク狩り
宮部みゆき(光文社文庫)

お勧め度:

人間は何故犯罪を犯すのか。その心理に踏み込んだサスペンスである。ストーリーの運び
方、人間の描き方がすぐれている。最後まで一気に読み通す事が出来た。ただし作者が作
中であらわしている考え方は、私の考え方と少し異なっている。作者は罪を裁くべきであ
るという立場のようだが、私は以前からこのHPで何遍も述べているように重犯罪者には
厳罰をもって処すべきであると考えている。殺人を犯したものは、当然死刑である。生き
る権利、更生する権利という物は、他の人と共に生きるという義務を果たさない人間に与
えられて良いものではない。
(2000.04.01)

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