ザ・ハリケーンS.チェイトン T.スウィントン(角川文庫)
お勧め度:★★☆☆☆ 人種差別による冤罪で刑に服している元ボクサーが、大勢の人々による協力により、つい に裁判に勝つという感動的な話なのだが、いかんせん文章が拙すぎる。実際に支援した人 により書かれた本なのだが、それが裏目に出ている。やはり文章を書くのはプロに任さな ければならない。 (2000.05.30)
レベル7宮部みゆき(新潮文庫)
お勧め度:★★★★☆ 腕に謎の文字を書かれ記憶を失った男女のカップルが巻き込まれた怪事件。別の女子高生 失踪事件と絡み合いながら、複雑な人間模様が描かれている。結構長い作品であるが、宮 部みゆきの他の作品と同様に途中でだれるところが無く、最後までぐいぐいと読ませる。 不気味な話を書きながらも、それを感じさせないストーリーテリングが素晴らしい。 (2000.05.25)
背筋が冷たくなる話谷甲州(集英社文庫)
お勧め度:★★★☆☆ ホラー&幻想短編集。人の心理の裏側を描いた作品が多い。ただしそんなに怖いわけでは ない。私は著者の作品の中では<航空宇宙軍史シリーズ>が好きなのだが、最近全然書い ていないようだ。 (2000.05.22)
水に似た感情中島らも(集英社文庫)
お勧め度:★★★☆☆ 中島らもの自分自身のノンフィクション。本人が躁鬱病で入院した前後の話を書いている。 物語は躁状態の前半の話と退院してからの話にわかれている。読み進むにつれ、バリ島の 自然と共に、ゆらゆらと水の中を漂っているような不思議な感覚が味わえる。 (2000.05.19)
グイン・サーガ72 パロの苦悶栗本薫(ハヤカワ文庫JA)
お勧め度:★★★☆☆ グイン・サーガ第72巻。ヴァレリウスとリンダを人質に取られたナリスが、ついに反乱 を起こした。まあシリーズ物なので読んでいる人のみ判る話だが。当初100巻で終わる 予定だったが、この巻の後書きにて作者自らが100巻で終わりそうに無いと書いている。 一体何巻まで続くのか。続くのは嬉しいけどちゃんと完結するかちょっと心配。 (2000.05.18)
初秋ロバート・B・パーカー(ハヤカワ・ミステリ文庫)
お勧め度:★★★★☆ スペンサーシリーズ。前々から読もうと思っていたのだが、機会が無くこれが初めての作 品になった。読んでよかった、そう思える作品に出会える事はなかなかあるものではない。 これはそういう作品である。自閉症の少年とスペンサーの心の交流が細やかに描かれてい る。私が好きなロバート・クレイスのエルヴィス・シリーズのエルヴィスとパイクの組み 合わせも、この本のスペンサーとホークから影響を受けている。 (2000.05.17)
無間人形 新宿鮫4大沢在昌(光文社文庫)
お勧め度:★★★★☆ ご存知、新宿鮫シリーズの第4作。今回の鮫島は新しく流行り出した麻薬を追って走る。 舞台は六本木とある地方都市。相変わらず長いが、テンポの良いストーリー展開と会話 でぐいぐいと読み進めることができる。恋人でロックバンドのボーカリストの晶がピンチ に追い込まれて、鮫島の怒りが爆発する。 (2000.05.14)
あなたとワルツを踊りたい栗本薫(ハヤカワ文庫JA)
お勧め度:★★★☆☆ ストーカー、というより人の妄執を描いた作品。アイドルとそれを追っかける少女、そし て少女をストーキングする男。さらにアイドルを狙うホモの俳優。様々な妄執を抱いた人 々の人間関係のもつれを描き出している。特に主人公である3人(アイドル、少女、スト ーカー)の3つの視点から物語を紡ぎ出している点が珍しい。 (2000.05.13)
レッド・ドラゴントマス・ハリス(ハヤカワ文庫NV)
お勧め度:★★★★☆ 「羊たちの沈黙」で著名なトマス・ハリスの作品。ちょうど「羊たちの沈黙」の前作にあ たる。この作品にもレクター博士が出ていて、彼を逮捕した捜査官グレアムが主人公であ る。グレアムは犯罪現場に立った時に、発生した時の状況を犯人の気持ちにたって綿密に 想像する事が可能な特殊能力を持っている。その能力を使って犯人を追い詰めて行くのだ が、犯人と意識をシンクロさせていくにつれて彼の運命も変わって行く。犯人も含めて登 場人物の心理が良く描けている。 (2000.05.08)
魂の駆動体神林長平(ハヤカワ文庫JA)
お勧め度:★★★☆☆ 「敵は海賊」シリーズ等の硬質なSFを書いている神林長平の作品。人間と機械との関係 を、クルマが自動車になった未来の世界で問い直している。この本で書かれている自動車 とは運転さえも自動になった言わば時間のかかる「どこでもドア」である。作中の人物の 会話を通して、”暖かい機械=魂を駆動するもの”に対する著者の愛情を感じることがで きる。話はさらに未来に移り、人類が滅んだ後の世界で翼人たちが人類の遺跡から発掘し た資料からクルマを作り上げるのだが...。この後は各自で読んでいただきたい。 (2000.05.04)