二日酔いのバラード
ウォーレン・マーフィー (ハヤカワ・ミステリ文庫)
お勧め度:★★☆☆☆
アル中保険調査員が、軽快な話術を武器に死ぬ直前に書きかえられた受取人の謎を追い詰
めて行く。とは言うもののセリフが空回りしているし、伏線をたくさん張った割りには、
最後にはドタバタと解決(?)していく。それに訳がちょっとなってない。あまりお勧め
ではない。
(1999.09.29)
ダーティペア FLASH 1 天使の憂鬱
高千穂遥 (ハヤカワ文庫JA)
お勧め度:★★★★☆
この間本屋に行ったとき、新刊コーナーを見てからSFの棚へ移動したところ、何とダー
ティペアの新シリーズが出ていることに気がついた。「何時の間に出てたんや!」と思い
3巻までを購入した。
内容は勿論清く正しいスペース・オペラである。名称はダーティペア・シリーズなのだが
中身は前とはちょっと異なっている。何でも作者自らが”ダーティペア・コンセプト”と
呼ぶ、同じようなシチュエーションを取り入れた作品らしい。
まあ能書きはさておき、一度読めばその面白さがわかってもらえるだろう。科学的な根拠
に裏付けられた物だけがSFではない。
(1999.09.26)
真夜中の喝采 きんぴか3
浅田次郎 (光文社文庫)
お勧め度:★★★☆☆
「きんぴか」(全3巻)の3巻目。元鉄砲玉と元自衛官と元大蔵省官僚の3人が活躍する
ピカレスク・ロマンの連作長編である。
今の世の中には筋を通したり、義を重んじたり、情に厚いという生き方は流行らないのか
も知れない。でもそれでは寂しすぎる時に、このような本を読みたくなるのかも知れない。
(1999.09.24)
グイン・サーガ外伝16 蜃気楼の少女
栗本薫 (ハヤカワ文庫)
お勧め度:★★★☆☆
グイン・サーガ外伝の16巻。本編ではシルヴィアを助け出してキタイを脱出したグイン
一行は、モンゴールのトーラスでケイロニア軍と無事落ち合う事ができたが、この巻では
その脱出行の途中のノスフェラスでの物語が語られる。
この巻ではカナン帝国が一夜にして滅亡した謎について触れられている。また久々にシバ
とドードーにも再開している。本編67巻、外伝16巻というシリーズ物なので、一般的
にはあまりお勧めできない。
(1999.09.23)
俺たちの日
ジョージ・P・ペレケーノス (ハヤカワ・ミステリ文庫)
お勧め度:★★★★★
これぞハード・ボイルドである。ギリシャ系アメリカ人達の友情と裏切りと愛を書き上げ
た傑作である。少年時代の仲間たちの友情。太平洋戦争でのフィリピンでの戦闘の恐怖。
帰ってきてからの取り立て屋をやる中での裏切り。仲間達と子供への愛。そして死。全て
のプロットが丹念に描かれている。
私が今まで読んだハードボイルドの中でも、1、2を争う面白さである。特に人物の描き
方が素晴らしい。またアメリカの1930〜50年代の風俗もよく書き込まれている。ハ
ードボイルドといっても、暴力的なシーンはあまり出てこないので、嫌いな人も是非一度
読んでいただきたい作品である。
(1999.09.22)
SFバカ本 ペンギン編
岬兄悟:大原まり子 編 (廣済堂文庫)
お勧め度:★★★☆☆
SFバカ本シリーズの第四弾。バカ話のアンソロジーである。未だにSFと言えば全く売
れない状況が続いているが、SF嫌いの人も是非読んで欲しい作品である。内容は馬鹿馬
鹿しくシュールで面白いの一言である。
特に「老年期の終わり」、「遭難者」、「バーチャルカメラ」、「因果応報」等は是非読
んで欲しい作品である。しかし問題はこの本を置いてある本屋自体が、そもそも少ない点
である。
(1999.09.18)
音楽が終わった夜に
辻仁成 (新潮文庫)
お勧め度:★★★★☆
エコーズのヴォーカルであった辻仁成のロック・エッセイ。80年代のロック・シーンが
その当事者であった作者の口から語られている為、リアリティが高いエッセイになってい
る。私がリアルタイムで聞いていたバンドの話が出てきて、懐かしい思いでいっぱいにな
った。
(1999.09.16)
唯物論 ナニワ錬金術
青木雄二 (徳間文庫)
お勧め度:★★★☆☆
ご存知「ナニワ金融道」を書いた青木雄二が、日本経済や資本主義についてずばずばと切り
まくる。多少、間違ったことやいいかげんなことを書いているところはあるが、「ナニワ金
融道」で見せた物事の本質を見抜く目で日本経済の問題点を解明している。
新聞や雑誌等には本当の事と嘘の事が入り混じって書かれている。無論、この本に書かれて
いることも全てが真実ではない。しかし生きていくために色々な見方や知識を知っておく事
はとても重要な事である。
(1999.09.15)
血まみれのマリア きんぴか 2
浅田次郎 (光文社文庫)
お勧め度:★★★☆☆
「きんぴか」(全3巻)の2巻目。元鉄砲玉と元自衛官と元大蔵省官僚の3人が活躍する
ピカレスク・ロマンの連作長編である。
こういった作品は誰でも書けそうなのだが、意外と巧い作者が書かないと途端につまらな
くなってしまう。ユーモアという物は高い知性が生み出すものである。笑わすツボと泣か
すツボを充分にわかっている作者により、この作品は気軽に楽しめる話に仕上がっている。
特にタイトルになっている「血まみれのマリア」の章は中々よい。
(1999.09.14)
図書館警察 Four Past Midnight 2
スティーブン・キング (文春文庫)
お勧め度:★★★★☆
先に出版された中編集の第2段。今回も680ページもあり、普通の作家でいえば長編集
に値する。最近のキングは長いばっかりで面白くなくなってきていたのだが、今回の作品
は面白く読みすすめる事ができた。
「図書館警察」
誰しも子供の時に図書館から本を借りたのはいいが、返却期限を過ぎてしまって、どうや
って返したらよいか悩んだ事があるだろう。私も返すのが遅れて怒られた経験がある。
この作品は、そのように借りた本の返却期限が過ぎてしまった男が遭遇した恐怖の物語で
ある。最近のキングは話をくどくどと引き伸ばしたり、もって回った表現をよくしている
が、この話は珍しくテンポよく話を進めていて、最後まで一気に読むことができた。
「サンドッグ」
誕生日プレゼントにもらったポラロイドカメラが、現実の世界ではなく別次元の世界を写
すカメラだった男の子の物語。「ニードフル・シングス」の前に書かれた作品と言う事で
キャッスル・ロックの話である。「ニードフル・シングス」の内容とリンクしている個所
が多い。
(1999.09.12)
猛禽の宴 <続・Cの福音>
楡周平 (宝島社文庫)
お勧め度:★★★☆☆
タイトルに<続・Cの福音>とあるようにシリーズ物の2作目。典型的なハードボイルド
またはクライム・ノベルである。銃、ドラッグ、美女、マフィア、異常性格者等のよくあ
る物語背景と、どこかで読んだようなプロットが展開される。
こういったタイプの小説が好きな人は、それなりに楽しく読むことができるだろう。
(1999.09.09)
村上朝日堂はいかにして鍛えられたか
文・村上春樹 絵・安西水丸 (新潮文庫)
お勧め度:★★★☆☆
「週間朝日」に連載されたエッセイの文庫化。村上春樹のエッセイは重い雰囲気が漂う小
説と比べると、かなり軽快な調子で書かれている。しかし所々に見られる社会のシステム
に対する視点は鋭いものがある。
通勤電車の中で読むとか気分的に落ち込んでいるときに読むのに向いている。
(1999.09.07)
マイノリティ・リポート
フィリップ・K・ディック (ハヤカワ文庫SF)
お勧め度:★★★☆☆
幻視者ディックのSF短編集。例のごとく現実と幻想が曖昧になったような作品である。
ディックの作品は出来、不出来の差が激しいのが特徴で、この短編集の中でもそれを見受
ける事ができる。
しかしながらSF好きな人にはお勧めできる一品である。現在の沈滞しているSFやスペ
ース・オペラでもなく、またサイバーパンクでもない本当のSFを味わう事ができる。
(1999.09.04)
六道ヶ辻 大道寺一族の滅亡
栗本薫 (角川文庫)
お勧め度:★★☆☆☆
大正ロマンの雰囲気が漂う推理(?)小説。平安時代から連綿と続く名家で大正時代に発
生した事件についてのノートを曾孫が見つけた。それを読み進めるうちに現在でも同じよ
うな事件が発生して...。
大正時代と現在の話を交互に繰り返しながら物語は進められる。その時代を超えたリンク
の部分は面白いが、内容は兄弟姦や同性愛などの愛憎が絡みややこしい話になっている。
(1999.09.02)