晴耕雨読 (日々の本読み) 1999年12月

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警告
パトリシア・コーンウェル(講談社文庫)

お勧め度:

検屍官シリーズの第10弾。前作で死んだベントンからの手紙(もちろん人づてに渡され
た物)で物語は始まる。後書きにも書かれている通り、サスペンスとしてはもう一つの内
容。しかしながら主人公やその周りの人達が、ベントンを喪った事で負った心の傷が一つ
一つ明らかにされていく。その心の苦しみが良く描けている。またこれも後書きで書かれ
ている事だが、このシリーズが日本でも売れている理由としては翻訳者である相原真理子
氏の文章もあげる事ができるだろう。外国の作品を読んでいて、前後の関係からしてあき
らかにおかしい訳をしていることがままある。良い翻訳者に巡り会えず売れない作品があ
るとすれば残念な事である。
(1999.12.27)

漂泊者
風間一輝(角川文庫)

お勧め度:

ジムのオーナーの罠に引っ掛かり、その復讐にオーナーを殺してしまい指名手配となって
いる男の物語。男は海外で転々としてほとぼりを冷ました後、日本に帰ってきて探偵をや
っている。ある依頼でふと引っ掛かる事があり、色々調べて行くうちに大掛かりな地上げ
に巻き込まれて行く。

地上げなんて言葉が出てくる事でわかるように1986年の横浜が舞台である。登場人物
も良く描けているし、プロットもまあまあ良く出来ている。しかし何かが足りないような
気がする。
(1999.12.22)

待っていた女・渇き
東直己(ハルキ文庫)

お勧め度:

「消えた少年」で有名な東直己の探偵物。この作品では同じ札幌を舞台にしながら、別の
探偵を主人公としている。少し内省的過ぎるのと娘を抱えているので行動に制約が出てい
る。人間関係はこちらの方が良く描かれているが、プロットの良さやストレートに切りこ
む話のテンポの良さは向こうの方が良い。どちらを進めるかと言うと当然「消えた少年」
の方である。
(1999.12.19)

地下鉄に乗って
浅田次郎(講談社文庫)

お勧め度:

父親を嫌って家を飛び出した男が、あるきっかけで父親の過去と出会う。そして父の生き
方、母の生き方、兄の死の原因を改めて深く知るようになる。そして愛人に父親に似てい
ると言われ、その愛人は実は自分の妹であった...。

地下鉄を通して現在と過去を行き来しながら、物語が進んで行くところがSF的な手法を
取っていて面白い。物語は思いが読んだ後の感じが良い。
(1999.12.17)

グイン・サーガ69 修羅
栗本薫(ハヤカワ文庫JA)

お勧め度:

グイン・サーガ69巻。イシュトヴァーンがノスフェラスで犯した罪についてモンゴール
の審問を受ける事になった。審問が進み意外な展開を呼んでついにイシュトヴァーンがモ
ンゴールを配下に治める事になった。

来年早々にも70、71巻が発売されるようで、いよいよ100巻に向かって加速してき
た。
(1999.12.12)

斜め屋敷の犯罪
島田荘司(光文社文庫)

お勧め度:

島田荘司が描く探偵・御手洗潔の物語。途中までは良く書けているが、謎解きという推理
小説で一番肝心なところが今一つであう。折角の伏線や舞台装置が活かされていないよう
な感じを受ける。

(1999.12.09)

冬の保安官
大沢在昌(角川文庫)

お勧め度:

大沢在昌の短編集。珍しいのはSFというか近未来のハードボイルドの連作が収められて
いる事だ。まあSF調のハードボイルドといったところだが。その他にはいずれも孤独な
男達の話ばかりである。しかしこの人の良さは長編でこそ発揮されると思われる。
(1999.12.05)

感傷の街角
大沢在昌(角川文庫)

お勧め度:

私立探偵・佐久間公の短編集。所々に後々の大沢在昌の才能が見え隠れするが、文章自体
はまだまだ未完成ということろ。まあ通勤電車で読むのには適当か。
(1999.12.02)

Copyright © 1999-2000 つり平

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