藪の中






秋も深まり、朝夕の冷え込みも厳しくなってきた10月下旬。
沙織に用を言いつかりギリシャ・サンクチュアリに出掛けていた紫龍と星矢が城戸邸に帰ってきたのは早朝五時のことだった。

「あーあ、くったびれたー! でも、ここで寝ちまうと、もろ夜昼逆転しちまうしなぁ」
とボヤきながらラウンジに入った星矢たちは、そこで、とんでもないものを発見してしまったのである。
胸を赤い血に染め、床に仰向けに倒れている女神アテナの姿を。
早朝の冷たい空気と薄闇の中に倒れている沙織は、生きている時以上の威厳と硬質的な美しさを身にまとっていた。
星矢は大きな声で――それはほとんど絶叫だった――女神の名を呼んだのだが、沙織はその呼びかけに答えてはくれなかった。






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