週末、瞬は一歩も家の外に出なかった。
終日、自分の部屋に閉じこもっていた。
時折窓の外を盗み見ると、そこには氷河が立っている。
瞬は、日がな一日、溜息ばかりついていた。
問題は、なにより自分が氷河を嫌いになれないことだと思う。
ファーストキスを盗まれようと、貞操を奪われかけようと、なぜか、あのフランス男を憎みきれないのだ。

(……だって彼、悪気なさそうだし、僕のこと ほとんど知らないくせに、まるで本気で真剣みたいだし……)
おフランス人の考えることなどまるでわからないが、彼は、恋人に優しい言葉をかけてもらい、その愛に報いてもらうのと同じくらい、恋人に つれなくされたり虐げられたりすることに ある種の喜びを得ているのではないかと誤解してしまいそうなほど健気(?)なのだ。
しかし、だからといって、ここで男の愛などを受け入れてしまうには、あまりにも瞬は常識人すぎたのである。
(やっぱり、はっきり言うしかないよね……)
それだけのことを決意するのに、“NOと言えない日本人”瞬は、土日の2日間を費やした。






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