初恋


〜 しゅがーえんぢぇるさんに捧ぐ 〜 







「おまえらとの腐れ縁は切っても切れないのか」

目の前に並んだ戦友たちの不景気な顔を見て、一輝は思い切り仏頂面になった。



突然聖域のアテナに呼び出され、
『城戸邸が大変なことになっているから、すぐに日本に飛んでちょうだい』
と頼まれたのが5時間前。
アテナは、一輝が日本に飛ぶためにと、自家用ジェットまで用意してくれていた。

いったい日本にどんな強大な敵が現れたのかとやってきてみれば、城戸邸の青銅聖闘士たちを代表した紫龍に告げられた言葉は、
「瞬がもう一週間も落ち込んだままなんだ」
である。

一輝が仏頂面になってしまっても、それは仕方のないことではあったろう。

無論、一輝とて、既に一週間も落ち込み続けているという弟が心配でなかったわけではない。しかし、地上の平和と安寧が再び破られそうになっているのかと緊張してここまでやってきた一輝に、紫龍から告げられた“一大事”は、あまりにも――あまりにも、平和すぎる一大事だったのだ。

確かに、アテナは『日本が大変なことになっている』とも『世界を揺るがす大事が起こっている』とも言いはしなかった。


言いはしなかったが。





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