自分の影すらも眩しくて目を細めずにはいられないような、真夏の午後の陽射し。 城戸邸の門を出た紫龍は、8月のまばゆく白い光に満ちたアスファルト道の照り返しの中にその一歩を踏み出した。 彼はこれから、この暑さにうんざりしている彼の仲間たちのために、アイスクリームを買いに行くところなのである。 うだるような夏の日々を城戸邸の完璧な空調設備に守られて過ごしている星矢たちが、突然アイスクリームが食べたいと言い出したのは、おそらく、今が暦の上では夏だから――という実に単純な理由からだったろう。 それに比して、アイスクリーム買出しの大役を紫龍が担うことになったのには、非常に深い訳があった。 すなわち、 (1) 氷河は、外に出ると溶けてしまう。 (2) 瞬は、その氷河に側から離してもらえない。 (3) 一輝は、そんな氷河を見張っていなければならず、 (4) 星矢は、面倒くさがり屋だった ――のだ。 それぞれの深刻な理由から外出のできない仲間たちのために、義と友情の士・紫龍が雄々しくも立ち上がった――わけである。 紫龍は、仲間たちの期待と友情に応えるべく、使命感に燃えて、駅への道をぽくぽくと歩み始めた。 |