瞬は彼の孤独を癒したいと思い、そのために努めたのだが、獣はなかなか瞬に心を開いてはくれなかった。
獣は、瞬の優しさが自分を懐柔するためのものかもしれないという疑いを捨てきれずにいるのかもしれなかった。


瞬が獣に語りかける言葉に、獣はいつも冷淡だった。
皮肉や冷笑で答えるのが常だった。

だが、獣は、瞬の許を訪れるのをやめない。

そして、彼は、瞬の望むことは、瞬が望む以上に叶えてくれた。
もっとも瞬の望むことは、こんなことになっても相変わらず、兄の様子を知りたいとか、庭の花を愛でたいというような、“金で買えるもの”ではなかったが。






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