夕暮れ間近の水色と藍色の溶け合った空。 城戸邸の裏庭に面した、滅多に人の来ないデッキでは、青銅のデッキチェアーとテーブルが、間もなく訪れる燃えるような夕暮れの色を受け入れようとして、静かな鈍い輝きを放っている。 瞬は、テーブルから少し離れたところにある、やはり青銅製のベンチの背もたれに、ひとり身体をもたせかけていた。 テーブルの上には、瞬がつい先程まで読んでいた一冊の詩集。 その詩集の表紙の上でしばし立ち止まっていた小さな風が、今度は瞬の髪にまとわりつき、やがてそれにも飽きたのかどこかに走り去っていく。 夏が終わったばかりの夕方の清涼な空気の中で、しかし、瞬の身体の内奥では僅かばかりの気怠さがくすぶっていた。 |