とまあ、そんな事件も起こりはしたが、15号との生活は概ね順調、平和なものだった。
15号の可愛らしさと、陰日なたなく懸命に働く様を見せらたなら、瞬でなくても、そして氷河でなくても、愛しいと思わずにはいられなかっただろう。




「15号ちゃん、そんなに頑張らなくてもいいんだよ」

その日、瞬と15号はケーキ作りに挑戦していた。
メレンゲを作るために、その小さな全身をフル回転させて必死に卵白を泡立てている15号を見兼ねて、瞬は15号に声をかけた。
15号に力があるのは事実である。
事実ではあるのだが、小さすぎるその身体では力の発揮方法が難しいらしく、卵白が純白のメレンゲに変わった頃には、15号はボールの脇で両肩をぜいぜい言わせていて、息をするのも苦しそうだった。

「泡立て器もあるんだし、そんなに無理しないで」
「いえ、泡立て器なんかより、僕の方がずっとお役に立てます!」

とにかく自分が役に立つロボットだということを瞬に示したいらしい15号に、仕事をするなとは、瞬には言うことはできなかった。だが、それにしても頑張りすぎなのではないかと思うことがないでもない。

――15号の記憶回路に組み込まれているケーキ作りのレシピのおかげで無事焼きあがったケーキのかけらを、ままごとのお皿に盛り、クリームとイチゴを1粒。
さしあたって、瞬にできるのは、15号に頑張ったご褒美をあげることだけだった。

そして、
「わぁ、僕、こんなに食べられない〜v」
と嬉しそうに言う15号を見て、我知らず微笑んでしまう瞬だったのである。


「お片付けは後でいいから、食べたらお昼寝してね。15号ちゃん、大活躍だったもの」

自分からは決して休憩を求めない15号にそう言いながら、楽しいおやつタイムを過ごしたその直後。


またしても事件は起こった。





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