15号の異様なまでの勤労意欲。
その理由がわかったのは、それから数日後のことだった。


その日、氷河と瞬の幼馴染みである星矢が、氷河と瞬の許を訪ねてきたのである。
ちょうどその時、居間のソファでいちゃついている最中だった氷河と瞬は、星矢の来訪を告げるドアチャイムの音に気付かず、星矢は星矢で勝手知ったる他人の家とばかりに、無断で玄関から家の中に入り込んだ。

それを、15号が空き巣狙いと勘違いして、飛びかかっていったからたまらない。
尋常でなく運動神経の発達した星矢は、自分に飛びかかってきた小さな物体が何なのかも確かめず、反射的に15号を振り払った。

かくして、15号は壁に叩きつけられ、そのまま床に落下していったのである。

異変に気付いて駆けつけてきた瞬は、その有り様を見て呆然とした。
自分が何をしてしまったのか気付いていない星矢の足許に、壊れて打ち捨てられた人形のような姿をさらしている15号――。

「じゅ…15号ちゃんっ !!  15号ちゃん、大丈夫なのっっ !!?? 」

手の平にすくいあげてみると、星矢に振り払われた衝撃なのか、あるいは壁に叩きつけられたせいなのか、15号の脚はおかしな具合いにねじれてしまっている。
ぐったりしてはいるが、痛みを感じてはいないらしい15号は、瞬の手の上でぽろぽろ涙を流していた。

「ご…ごめんなさい、瞬様……。僕、泥棒を捕まえたら、瞬様に喜んでもらえると思ったの……」

こんな哀れな姿になってまで、そんなことを言っている15号に、瞬までが泣けてきてしまったのである。
「15号ちゃんが! 15号ちゃんが無理したり怪我したりする方が、僕はずっと嫌だって言ったでしょう! どうしてこんな…!」

「ごめんなさい……ごめんなさい、瞬様……」

瞬の涙を見た15号の瞳に、また新しい涙があふれてくる。

「僕、壊れちゃった……。僕、やっぱりメイドロボ失格なんだ……」

肩を震わせて泣く15号に、瞬は悲しさをこらえきれずに尋ねたのである。
「どうしてそんなに無理するの……。僕たちが、そんなにすぐ15号ちゃんを追い出したりするように見えたの……」

「ち…違うの! 違うんです! 瞬様、そうじゃないの…… !! 」


そうして、15号が氷河と瞬に語り出したのは、メイドロボが人に作られた商品であるが故の辛く厳しい現実だった。





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