「氷河様……氷河様、ありがとうございます! 僕、氷河様のためなら何でもします! ありがとうございます……!」
沙織が部屋からいなくなると、それまで泣きべそ顔で事の成り行きを見守っていた15号が、氷河に向かって何度も何度も繰り返し頭をさげてきた。

氷河はそんな15号を一瞥しただけで、15号の謝意と感激をあまり深刻には受け止めた様子もない。
「ふん。感謝なら瞬にしろ。俺はただ、瞬と同じ顔のものが廃棄処分されるなんてことが我慢ならなかっただけだ」

「それでも、氷河様は、僕に心があるって認めてくださった……」
「? あるじゃないか」
「え?」

考えるまでもないことだと言わんばかりにあっさりと氷河に言われた15号が、一瞬、瞳を大きく見開く。
それから15号は、嬉しそうに破顔した。

「はい! はい、そうです!」

元気に良い子のお返事をして、15号が拳で涙を拭う。

「氷河様。氷河様って、本当に瞬様が好きなんですね!」

それから、15号は、まるで我が事のように誇らしげにそう言って、涙の乾きかけたつぶらな瞳を輝かせた。





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