「……でも、ここに氷の国星の小人さんたちがいるのに、オーロラ波動砲を発射したりしたら、氷の国星の小人さんたちの命も危険なんじゃないの?」

瞬が口にした危惧の言葉は、氷河の考えに合致していました。
そうです。
氷の国星の氷河は、なぜそんな危険なことをするのか――そこが、どうしても氷河には解せなかったのでした。


が、氷の国星の小人たちは全然平気。

「あ、それは大丈夫なの」
「僕たちのお洋服は、氷の国星の超一流ブランドのオートクチュールだから」
「6000度からマイナス300度まで耐えられる特殊繊維で作られてるんだよ」
「これくらいの備えをしてないと、宇宙旅行をするのは危ないからって言って、氷河が買ってくれたのー」

「あのブランドって人気があるから、一見さんお断りなんだよ」
「常連さんの紹介がないと、お洋服作ってくれないの」
「でも、氷河や僕たちには、デザイナーさんやお洋服会社の人たちの方が、『ぜひ作らせてください』って言ってきたんだよ」
「僕たちの氷河はモデルさんより全然カッコいいし、僕たちはとってもかわいいから」
「お洋服を着てくれるだけで宣伝になりますからって。だから、お金払わなくていいの」
「僕たちの氷河のお屋敷の衣裳部屋には、超高級ブランドのオートクチュールのお洋服が、ずらーって並んでるんだよ」

「さっきテレビに出てた氷河が着てたお洋服もオートクチュールなの。NOAっていうブランドラインなんだって」
「マントがばさばさ〜ってなって、カッコいいよね〜」
「カッコいいよね〜」× 15


氷河は、つい先程までテレビに映っていた氷の国星の氷河の衣装を思い出しました。
白と青と黒を基調にした、軍服なのかパイロットスーツなのかわからないようなデザインの彼の服は青いマント付き、散々どアップで地球を恫喝しまくった後で、画面はズームアウト、氷の国星の氷河がマントを翻して立つ全身ショットを映し出して、その映像は途絶えました。

随分とカッコつけの激しい氷河だなと、地球の氷河は呆れかえっていたのです。
ですが、今問題なのは、氷の国星の氷河のコスチュームではなく、氷の国星の小人たちの身に着けているものの方でした。

「だが、今、おまえたちが着ているのは、地球産の燃えやすく凍りやすい布でできた、ありふれたパジャマだ」

「しまったー!」× 15

何ということでしょう。
そうだったのです。
小人たちは、メイドロボたちに急かされて、パジャマのままメイドロボハウスを出てきていたのです。

「お着替えするの忘れてたー」
「わーん、氷河にお行儀悪いって怒られちゃうー」
「ああっ、ポイントが下がってるー!」
「うわーーん !! 」× 15

人の価値観はそれぞれです。
氷の国星の小人たちには、自分たちの命が危険にさらされることよりも、ポイントが減っていることの方が大問題だったんです。

賑やかなお喋りの倍のボリュームで泣き出した氷の国星の小人たちを、瞬は慌てて慰めてあげました。
「み……みんな、大丈夫だよ。それくらいすぐに取り戻せるよ。氷の国星の小人さんたちは、いつもとっても一生懸命やってて、すごく立派なんだから、このくらいの失敗は気にしなくていいんだよ」

「おっきい瞬ちゃん……僕たち、リッパ?」
「うん、すごく偉いよ。だから泣いちゃだめ。氷の国星の氷河さんも、きっと小人さんたちの笑顔の方が好きだよ」
「うん……」

氷の国星の小人たちに、誉め言葉の効果は絶大です。
小人たちは、まだしばらくは、ぐしぐし泣いていましたが、やがていつもの笑顔に戻りました。







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