氷の国の氷河と小人たちの愛の危機をいちばん最初に察知したのは、たれたれ氷河さんでした。 小人たちは、キッチン基地防衛隊の秘密基地を、いつ怪獣が襲ってくるかもしれないキッチンから、何かが起こっても安全な、たれたれ氷河さんの足許に移動させていたからです。 小人たちの極秘作戦会議は、たれたれ氷河さんの座っているソファの横で開催されていたのでした。 クールでセクシーなたれたれ氷河さんは、小人たちの極秘作戦会議の議事進行を傍聴しながら、長く深い溜め息をついたのです。 「氷の国の氷河の報われなさは、同じ氷河として、見ていられないものがあるな。俺は、あの男を見るたびに哀れをもよおすようになってきたぞ」 その夜、たれたれ瞬ちゃんと、氷の国の氷河にはとても言えないような幸せなことをした後で、たれたれ氷河さんは、自分の隣りにいるたれたれ瞬ちゃんにセクシーに言いました(←たれたれ瞬ちゃんと二人きりの時には“クール”が取れます)。 「小人たちには、俺たちが、大人のたしなみを教えてやった方がいいのかもしれん」 たれたれ氷河さんは、本来は、こういうことに第三者が口を出すのはよろしくないと思っていました。 けれど、それは、努力が普通に報われる人間の話です。 どんなに頑張っても頑張っても頑張っても頑張っても頑張っても報われない氷の国の氷河には、やはり、誰かが救いの手を差し延べてやらなければならないのかもしれない――と、さすがのたれたれ氷河さんも思い始めていたのです。 「氷の国の氷河さん、今日も“哀しい男”してたの?」 「哀しいも哀しい、数十億年の地球の歴史上、奴以上に哀しい男はいなかったに違いないと即座に断言できるほどの哀しさだ」 そんなことで歴史上の人物になってしまったら、氷の国の氷河の哀しさは更に磨きがかかることでしょう。 「かわいそうに……。悪い人じゃないのにね」 たれたれ瞬ちゃんは、同情に耐えないという様子で、気の毒そうに呟きました。 「…………」 たれたれ氷河さんは、たれたれ瞬ちゃんのその言葉には何も答えません。 大人だったからです。 思い遣りのない人だったら、ここで、 『馬鹿ではあるがな』 と、言下に言ってしまっていたことでしょう。 それは事実であって、中傷でも何でもないのですから、言ってしまっても誰からも文句は出なかったでしょうけれどね。 |