氷河たちは、たれたれさん宅のリビングルームで、不感症になるための不毛なディスカッションをしていました……。

「感覚を抑制するには、まずその感覚に慣れないとならんのだが、おまえの場合は……」
氷の国の氷河の背景に影線が3本出現しました。

「小人たちのペースに巻き込まれて、保護者になってしまうのが敗因だな」
氷の国の氷河の背景の影線が5本増加、汗マークも出現。

「とにかく、おまえが主導権を握らないことには、話が先に進まないだろう。どうしてそんな簡単なことができないんだ」
「そ……そんなに簡単にできることなら、俺だって……」
氷の国の氷河の背景の影線が増殖し、その間隔が最小値に変化。


目も当てられないバックを背負って項垂れている氷の国の氷河に、たれたれ氷河さんは溜め息を洩らしました。
何よりも、そのバックがあまりに氷の国の氷河に似合いすぎていることが、たれたれ氷河さんの哀れを誘ったのです。

けれど、仮にも氷瞬界の氷河がそんなことではいけません。
氷瞬界の氷河は、瞬の背負っている可憐な花と一緒に一枚の画面に収まってもカッコよく決まっていなければなりませんし、瞬の気持ちを惹きつけるために孤独な白い嵐をクールに背負ったりもしなければなりません。

間隔最小値の影線などという、1枚150円の安売りスクリーントーンなんかを背負っていてはいけないのです(仕上げが簡単で楽なんですけどね)。


この不幸で哀れで気の毒でみじめで悲惨な男を救うためには、少々具体的で即効性のある助言が必要だろうと、たれたれ氷河さんは考えました。

「小人たちが1番目を輝かせて喜ぶものは何だ?」
「それは……やっぱり甘いものかな……?」

そもそも氷瞬界の氷河なら、ここで『それはやっぱり俺だろう』くらい言えなければなりません。
そう言ってしまうことのできない氷の国の氷河に同情しつつ、たれたれ氷河さんは重ねて言いました。
「なら、それを使えばいいんだ。これはうちの瞬で検証済みだが、かなりなコトがスムーズにできた」

「かなりなコトとは……?」
『こと』がひらがなでも漢字でもないあたりが、微妙に妖しげです。
氷の国の氷河は、なぜかちょっとびくびくしながら、たれたれ氷河さんに尋ねました。

「うむ。確か……あの時はメープルシロップでやったな。俺の●●にシロップを垂らすと、瞬も積極的に○○○してくれるし、××を○○○させるのも大丈夫だったし、瞬の●●のあたりや△△なところにシロップをまぶしても楽しめた」


「そっ……そんな夢のようなことが〜〜〜っっっ !!!! 」

たれたれ氷河さんが何でもないことのように告げるその言葉の一つ一つが、氷の国の氷河にはものすご〜っっっっく! 刺激的な単語の羅列でした。
そのあまりに激しい衝撃に、泡を吹いてブッ倒れることも忘れてしまうくらい、たれたれ氷河さんの告白は氷の国の氷河には刺激的だったのです。


「クリーム系も使えるぞ。ま、オトナの味はほろ苦いだけじゃないってことだな」
なーんて、クールに言い放つたれたれ氷河さんの前で、氷の国の氷河は、電池の切れたゼンマイ人形のように、ひたすら硬直していることしかできなかったのでした。