氷の国の氷河が自分の本を発刊してから、1年が過ぎた頃でした。

イベント会場近くのティールームで、小人たちと氷の国の氷河は、イベント終了後のお茶を嗜んでおりました。

スプーン15本に注ぎわけられたお茶を飲みながら、小人たちは今日もにこにこ顔です。
「あー、今日のイベントも充実してたね!」
「うん、今日も完売したね!」
「お客さんも楽しそうだったし」
「僕たちもたくさんダンスできたし」
「大盛況だったね !! 」

小人たちのイベントは、今日もとても楽しいものでした。
けれど、氷の国の氷河の方は……。

「…………」

「氷河……」× 15

6月の梅雨空よりもどんより暗い表情の氷の国の氷河に、小人たちの気分もちょっとじめついてきます。

「ひょ…氷河、今日も本、売れなかったの?」
「い…1冊も……?」

「…………」

返す答えさえないというのが、氷の国の氷河の答えでした。
氷の国の氷河の暗い眼差しに、小人たちは大慌てです。

小人たちは、場を明るくするために、ほんのちょっと作った笑顔で、そして、かなり作った明るい声で、氷の国の氷河にアドバイスしてあげました。
「あ……あのね! もっと明るいお話にすればいいと思うの」
「そーだよ、もっと明るくしなくちゃ! 一緒に暮らしてる小人さんが氷河の気持ちをわかってくれないなんて、そんな話、暗いもん」
「僕たちと氷河みたいに、仲がよくて、いつも協力し合ってて、お互いに理解し合ってて、すごく幸せ〜♪ なお話を書けばいいんだよ!」
「うんうん。僕、こないだ、氷河の書いたお話読んでみたけど、なんか途中から気分がどよ〜んってなっちゃって、最後まで読めなかったもん」


氷の国の氷河の気分は、小人たちの励まし(?)を聞いて、ますますますます、どよ〜ん★ です。


あげく、小人たちに、
「僕たち、こんなに仲よくて、幸せなのに、どうして氷河ったら、あんな作り話つくるの?」
なんて言われてしまっては、氷の国の氷河は、もう何も言うことはできないのでした。