問題は、そのホテルでの過ごし方です。

氷の国の氷河は、たれたれ氷河さんに、
『どこかに旅行に行った時には、ホテルは、ちゃんとおとなな使い方をしろよ』
と、幾度も助言してもらっていました。

ですから、初めてのコミケ前日に、ホテルにチェックインする時、氷の国の氷河は、胸に下心を秘して、
「おまえたちが小人のままだと、宿泊費が15人分かかるから、ホテルでは合体してた方がいい」
と、小人たちに言ってみたのです。

けれど、小人たちは、氷の国の氷河の切なる思いも知らず、
「えー、どーしてー?」
「お部屋は氷河の分だけでいいじゃない。僕たち、氷河のベッドで眠るから〜」
と、事情を知らない他人が聞いたら実に羨ましいことを(氷の国の氷河にとっては実に哀しいことを)無邪気に言い放ち、1号〜7号は氷河のジャケットの右ぽっけ、8号〜14号は左ぽっけ、15号は胸ぽっけにもぐり込んでしまったのでした。

そうして、氷の国の氷河は、結局、一人客の振りをしてチェックインを済ませました。
たれたれ氷河さんに教えてもらった『ホテルのおとなな使い方』は、とても、大変、ものすごーく実践してみたかったのですが、小人たちがこんなふうでは、それは到底無理なこと。

それに、『おとなな使い方』だとダブルの部屋を取らなければなりませんが、これならシングルを1室で済みます。
海外からコミケに参加するために、氷の国の氷河は、往復の旅費やらイベント参加費やらで、16人分合わせて、10万円以上の出費を余儀なくされていました。
多額の出費に比して、収入の方はといえば、小人たちの本が完売して150円。

氷の国の氷河は、節約しなければならなかったのです。

小人たちには、ぽっけの中に隠れていてもらうのが得策のようでした。