けれど、氷の国の氷河の節約術や、小人たちの食欲なんて、巨大な経済活動の中では、本当にささやかな出来事、大海に溶け込んだ一滴の冷や汗のようなものでしかなかったのです。

ホテル側は、真っ青になって歩くことも不可能状態の氷の国の氷河に15人分の食事代を請求するようなことはありませんでした。

氷の国の氷河と小人たちが泊まったホテルは、全く別の方法で、自らの被った損害を見事に取り戻したのです。
いいえ、その損害を数千・数万倍の利益に変えてしまったのでした。


『インターコンチンチンネンタルタルソースホテル有明』という名前のそのホテルは、小人たちが宿泊した1ヶ月後に、名称を『小人さんホテル』に変更しました。

そして、1階ロビーの横に『小人さん宿泊記念展示室』を設けたのです。
記念展示室が、コミケ参加者たちの観光定番コースになるのに、さほどの時間はかかりませんでした。

それだけではありません。
そのホテルは、ホテル内のティールームやレストランに、『小人さんケーキブッフェ』、『小人さんランチメニュー』、『小人さんディナーコース』等の特別メニューを作り、ホテルに入っているお店では、小人さんストラップや小人さんキーホルダーの発売を開始。

小人さんストラップや小人さんキーホルダーは、もちろん15種類あって、しかもパッケージを見ただけでは、中に入っているのが何号のストラップやキーホルダーなのかわからない作りになっていました。
ですから、小人さんフリークのお兄さん・お姉さん、子供にせがまれたお父さん・お母さん、孫に泣きつかれたお祖父さん・お祖母さんたちは、15種類を揃えるために幾度もホテルに足を運び、そのたびにホテルにお金を落としていくことになるのでした。