小人さん企画が大当たりしたホテル側は、いよいよ調子に乗りました。
『時代は今、小人さん!』と言わんばかりに、小人さん関連サービスを拡充し始めたのです。


ホテルのドル箱と言えば、なんと言ってもウェディングプランです。

『小人さんホテル』は、庭に教会を建て、『可愛い小人さんたちの地球一素敵なハッピー・ラブリー・ウェディングプラン』を開始しました。

披露宴の食事は、小人たちがモーニングのバイキングで食べたのと同じメニュー(←安いが量がある)。
ウェディング・ケーキは、マジパンでできた15人の小人たちが飾られてる三段重ねのホワイトチョコレートケーキ。
式後の宿泊は小人たちが泊まった部屋。
そしてもちろん、ハネムーンは氷の国へのオーロラツアーです。


このプランが、大ヒット!

それまで、瞬ちゃんズの国ではほとんど知られていなかった氷の国は、一躍、『死ぬまでに一度は行きたい観光地ナンバー1』の座に踊り出ました。


氷の国の氷瞬城の前は、『可愛い小人さんたちの地球一素敵なハッピー・ラブリー・ウェディングプラン』に参加した新婚カップルたちで大賑わいです。

「わー、これが噂の氷瞬城なのね〜」
「運がよければ、お庭でダンスをする小人さんたちを見れる時もあるんだってー」
「今日はいないみたいだなぁ」
「小人さんたちのお城にしては、おっきいわね!」
「いや、ほら、このお城には小人だけじゃなく、あの男も住んでいるそうだから」
『小人さんホテル』の用意したパンフレットを眺めていた新郎その1は、そう言って、含み笑いを洩らしました。

「ああ、あの有名な……」
新婦その1も、くすっ☆ と、少し意地の悪い目で微笑みました。

「運がいいと、あの男がオーロラに向かって叫んでるところも見れるらしい」
「へえー、私、見てみたいわ、その“世界一哀しいオトコ”!」
新郎その2が少し声を潜めたのに比して、新婦その2は遠慮のない大声です。

「噂によると、小人たちよりその姿を拝める確率は低いらしい。大抵は、城の奥深くで悶々としてるそうだから」

「やっだー、くっらーい !! 」×(ハネムーンツアーに参加している新婦の数)