氷の国の氷河・父親化防止計画

〜加害授業 第1時限〜









非日常【実技1】




氷の国の夏は短いです。
その短い夏の間に、野原の花々は、一斉に競うように花を咲かせます。

18人は、そんな、お花でいっぱいの野原にいました。
青い空に突き出したような断崖がすぐ側にあり、その下は、北国の雪と氷に削られた深い谷。

おやつを並べたレジャーシートの上で、楽しそうに踊りながらおやつを食べている小人たちと、そんな小人たちを切なそうに見詰めている氷の国の氷河を見やり、たれたれ瞬ちゃんはたれたれ氷河さんに尋ねました。

「ところで、非日常のテストはどんなことするの?」
「ライオンは千尋の谷に我が子を落とし、這いあがってきた子のみを育てると言う。そのテストだ」
重々しい口調でそう言って、たれたれ氷河さんは、おやつを食べ終えたみんなを崖の上に連れて行ったのです。

小人たちの中ではいちばん勇気のある13号が、霞んで底の見えない谷を覗き込み、ちょっと足取りをふらふらさせて、みんなの許に戻ってきました。
「僕、それ知ってる。ライオンって、そうやって、強い子だけを育てるんだよね」

「えええっ、ひどいー。僕、そんなことしちゃいけないと思うー」
「僕もー」
「弱い子だって、頑張って生きていこうとしてるかもしれないのにー」
「そーだよねー!」

口々に異論を唱える小人たちに、たれたれ瞬ちゃんがにっこりと微笑みかけます。
「小人さんたち、安心して。誰も小人さんたちにそんなことしたりしないから。谷に突き落とされるのは、小人さんたちじゃなくて、氷の国の氷河さんの方に決まってるよv」

優しい笑顔でそう言い終わるや、たれたれ瞬ちゃんは、氷の国の氷河の背中をどん★


「うわあああああああああああ………」


「しゅ……瞬……?」
思いがけない展開に、たれたれ氷河さんは超ドびっくり。

「ね、そうだよね? それで、氷の国の氷河さんが這い上がってきたら、点数あげるんでしょう?」

「あ……いや……」

たれたれ氷河さんは、小人たちのおなかをきっちり結んだ、長さ100メートルほどの紐を15本、しっかり右手に握っていました。
たれたれ氷河さんは、命綱つきの小人たちを崖の下にぶら下げて、氷の国の氷河に助けさせるつもりだったのです。



──崖の高さは、30階建てのビルくらいありました。