では、小人たちのコンサートの様子を覗いてみましょうか。


ステージには普通サイズの大きなピアノが一台。

司会進行役の氷の国の氷河は、スポンサーであるめーじゃ製菓が準備した『めーじゃ製菓』のロゴ入りスーツを着ています。

「それでは小人たちの入場行進です。皆様、拍手でお迎えください!」

氷の国の氷河が小人たちを呼びますと、氷の国の氷河お手製の可愛いステージ衣装を着た小人たちが、15人並んでステージの袖から一列縦隊で登場します。
そして、えっちらおっちらピアノ登りして、演奏開始。


演奏前から、小人さんフリークのお姉さんたちは既に総立ち状態です。

「1号ちゃーん!」
「2号ちゃーん!」
「3号ちゃーん!」
「4号ちゃーん!」
「5号ちゃーん!」
「6号ちゃーん!」
「7号ちゃーん!」
「8号ちゃーん!」
「9号ちゃーん!」
「10号ちゃーん!」
「11号ちゃーん!」
「12号ちゃーん!」
「13号ちゃーん!」
「14号ちゃーん!」
「15号ちゃーん!」
と、ファンの歓声が飛び交う中、小人たちは、ハンマーを持って、演奏開始。

小人たちは手にハンマーを1つずつ持っていて、だ〜〜っ☆ と目指す鍵盤のところへ行って、ごい〜ん☆ とハンマーを打ちおろすのです。

フリークのお姉さんたちは、自分のご贔屓小人さんのカラーのペンライト型ハンマーを振りながら、今度は静かに演奏の応援です。

小人たちの演奏する曲は、CDがオリコン1位を独走中の『めーじゃチョコろんのテーマ』だったり、ショパンの小犬のワルツだったり、チャイコフスキーの白鳥の湖だったり、ラジオ体操の歌だったり。
ベートーベンの第九だってこなします。
なにしろ、小人たちは天才ピアニストですから、曲目を選びません。


鍵盤の上を縦横無尽に走りまわる小人たちは、曲が一つ終わると、フルマラソンを完走したくらいに疲れきっていて、砂糖水で給水しながら、次の曲に進みます。

給水は、演奏が1曲終わるたび、氷の国の氷河が砂糖水の入った小さなコップをトレイにのせてピアノの上の小人たちに手渡し。
小人さんフリークのお姉さんたちはそれを見て、
「氷の国の氷河、邪魔よーっっ !! 小人さんたちが見えないじゃないのーっ! 引っ込めーっっ !! 」
なーんて、結構残酷なことを叫んだりするのです。


真のフリークになると、氷の国の氷河にお近づきになって、小人たちが使ったコップを分けてもらおうと企み、氷の国の氷河に偽りの優しさを示してみたりもします。

楽屋に氷の国の氷河を訪ねてきた真のフリークさんたちに、
「いつも大変ですね。でも、頑張ってくださいね」
と、滅多に聞けないねぎらいの言葉を言われて、じーん☆ と感動していたのに、
「ふふふふふ。こうして氷の国の氷河に優しくしておけば、2号ちゃんの給水コップをもらえるようになるかもしれないわっ」
「私も7号ちゃんのコップを手に入れるまで頑張るわよっ」
なんていう内緒話を聞いてしまったりして、氷の国の氷河の繊細な心は、少なからず傷付いたりもするのでした。


でも、そんなフリークのお姉さんたちの仕打ちにもめげず、氷の国の氷河は、小人たちがベストコンディションで演奏できるように、ひたすら小人たちに尽くします。
氷の国の氷河は、どんな辛いことでも、小人たちの笑顔を見れば忘れてしまえるのでした。

時々、たれたれ瞬ちゃんが陣中見舞いに来て、氷の国の氷河に差し入れしてくれたりもしましたからね。


思いがけないピアノの才能のせいで、多忙を極めることになってしまった氷の国の住人たち。


熱くて暑い真夏のある日、そして、事件は起こったのでした。