「ねえ、9号。こんなに高く売れたんだから、南の方に山を一つ買って、東の小川に橋を架けて、氷瞬城の玄関の電気を取り替えても……」 「氷河にゴム手袋買ってあげられるよね?」 「形状記憶シャツも」 「氷河の髪の毛結ぶおリボンも」 「買ってあげられるね〜♪」× 14 ネットオークションが、目標値の倍以上の値段がついて終わったので、小人たちは浮き浮きしていました。 「うん。そうだね。でもこの落札者ってどんな人なのかな? 氷河、メールの返事来た?」 けれども、『勝って兜の緒を締めよ』の格言を知っている9号は、まだまだ慎重な態度を崩しません。 「今からチェックするところだ」 「わ〜い、見せて」 「僕も見る〜」 「僕も僕も」× 13 氷の国のメールソフトはポストペット。 小人たちはみんな、メールを運んでくれるピンクのクマさんが大好きなのです。 氷河がメールをチェックする時は、パソコンの画面に整列して、このクマさんやクマさんのお友達のネコさんやウサギさんが来るのを毎回楽しみにしていました。 ぴょろらら〜♪ と音楽が鳴ってメール着信の合図です。 「おかえり〜。クマちゃん」 「あっ、誰か来たよ」 「ペンギンさんだ」 「こんにちは〜」 「これは……。落札者からの返事がきたぞ」 「なんて書いてあるの?」 「自家用飛行機で直接荷物を引き取りにくるそうだ」 「わぁ、お客様がくるの?」 「僕たちの鍵盤を買ってくれたお客様」 「お金持ちのお客様〜」 小人たちにとって、お金持ちのatenasaori_ojyoは、氷の国の氷河に形状記憶シャツを買ってくれる優しい人でした。 氷の国の国庫を潤してくれる親切な人でもありました。 「そう。とっても大事なお客様だよ。さぁ、みんな、おもてなしの準備にとりかかろう」 「おお〜 !! 」× 14 9号の号令一下、小人たちはわくわくしながらお客様を迎える用意を始めることにしたのです。 「歓迎のダンスの練習しなくちゃ」 「うんと上手に踊って、喜んでもらおうね!」 小人たちは歓迎ムードいっぱいです。 ところが、お金持ちのatenasaori_ojyoは、随分とせっかちな人のようでした。 「…… !? なに〜っ、今日来るだと〜っっ !? 」 atenasaori_ojyoのメールの続きを読んで、氷の国の氷河がびっくり仰天した、ちょうどその時。 氷の国の氷瞬城の空の上から、飛行機のエンジン音がとどろいてきたのです。 はたして謎のatenasaori_ojyoの正体とは !? 小人たちは無事に氷の国の氷河に形状記憶シャツを買ってあげることができるのでしょうか? |