――できるわけがありません。
1日が過ぎても、真っ白いままの原稿用紙に、9号は爆発寸前です。


「氷河ったら、どーして書けないの!」
「だから、俺には文才が……」
「文才なんか全然ないのに、小説メインのサイトを持ってる変なオンナの人を、僕、知ってるよ!」
「彼女は文才はないが、モーソー力があるだろう。俺が書かなきゃならないのは、ノンフィクションなんだ」
「あったこと、そのまま書けばいいんだから、ますます簡単じゃない。どーして書けないの!」

9号は、氷の国の氷河の原稿の完成が遅れて、『氷の国の宇宙人襲撃裁判顛末記』の発売が延期になり、売上が落ちるのを心配して、苛立ちまくりでした。

「しかし、俺は、朝昼晩のご飯の支度に、掃除や、ぱんつ作りもあって忙しいし、家計簿はおまえがつけてるから、ここ数年、文章どころか文字を書いたことすらなくて……」
「オークションの質問には答えてたじゃない! メールだって…」
「ああいうのは話し言葉でいいから……。大部分は、おまえたちの言うことをそのまま打ってただけだし……」

氷の国の氷河は、9号に叱られて、しょんぼりと肩を落としてしまいました。
氷の国の氷河だって、9号の期待には応えたかったのです。
けれど、人には向き不向きがあり、できることとできないことがあります。

原稿書きは、氷の国の氷河にはできないことでした。