せくしーな生霊さんにゴーストライターを頼むのも無理とわかり、事態は振り出しに戻りました。
つまり、小人たちの窮状脱出の糸口は全く見えてきていないということです。


「どうするの、9号?」
「締め切りは明日だよ」
いつも楽観的な小人たちも、さすがに心配になってきました。

「……仕方がない」
仲間たちの心配そうな視線を受けて、9号が厳しい表情になります。

「諦めるの?」
「諦めは愚か者の結論だよ」
「あ、プロのごーすとらいたーを頼むの?」
「こんなことでお金を使うなんて、僕のプライドが許さないよ!」
「じゃあ、どうするの?」
「もちろん! 僕たちが書くんだ! 僕たちが、氷河のゴーストライターをする!」

「えええええっっ !! 」× 14

9号のその決意には、さすがの小人たちも驚天動地のドびっくり。
多才で名を売っているとはいえ、小人たちがこれまでに描いたことがあるのは、コミケ用のお絵描き原稿だけ。
文字原稿は一度も書いたことがなかったのです。

けれど、9号は本気で真剣のようでした。
「大丈夫だよ。氷河になりきって考えれば、きっと書ける! 裁判の朝、僕たちの氷河がどんな気持ちだったか、みんな考えてみて」


「裁判の朝、僕たちの氷河がどんな気持ちだったか……」
「僕たちの……」
「氷河の……」
「気持ちに……」
「なる……」


そうして、小人たちは、ガラスの仮面をかぶり、氷の国の氷河のゴーストライターを務めることになったのです。

氷の国の氷河になりきった小人たちが口述したものを、氷の国の氷河が、幸いにも会得していたブラインドタッチでパソコンに入力。
原稿はたった一晩でできあがりました。

それは、愛し合う15+1人だからこそ成し遂げられた奇跡だったのかもしれません