そんなふうにして出来上がった原稿を、氷の国の氷河と小人たちは、たれたれ氷河さんに見てもらうことにしました。


「これを……本当におまえが書いたのか?」
原稿を一読したたれたれ氷河さんは、原稿を読み終えるなり、ひどく疑わしげな目で氷の国の氷河を見やりました。

「え……」
ゴーストライターがバレたかと思って、氷の国の氷河の心臓は跳ね上がりました。


「この文章は、本当におまえの書いたものなのか?」

「あ、それは……」
やはり、子供っぽさがにじみ出ているのかと、氷の国の氷河はどきどき。

「……も…もちろんだよ! 氷河が書くとこ、僕たち、ちゃんと見てたもんねー!」× 15
やはり、大人の文章とは違うのかと、小人たちもはらはらです。


「…………」
たれたれ氷河さんは、しばらく無言で、どきどきしている氷の国の氷河と、はらはらしている氷の国の小人たちを見詰めていました。

そして、緊張の長い時間が過ぎた後、たれたれ氷河さんは、突然、いつものクールな表情を珍しく明るさ全開にして言ったのです。

「見直したぞ、氷の国の氷河! 素晴らしいじゃないか!」
――と。


「えええええっ !? 」
びっくりしたのは、氷の国の氷河と小人たちです。

けれど、たれたれ氷河さんは、それがゴストライター小人たちの作だとは疑ってもいないようでした。
「まさか、おまえに、こんなちゃんとした文章が書けるとは、俺は思ってもいなかったぞ!」

「うん。僕もびっくりしちゃった! すごいね! ちゃんと意味が通じるよ! 僕、氷の国の氷河さんは、お裁縫でしか、言いたいことを表現できないのかと思ってた!」
「解説なんて頼まれて困ってたんだが、これなら何とかなりそうだ」


「…………」
氷の国の氷河は、自分がたれたれ家の2人にどの程度の人間だと思われているのか、ちょっと不安になりました。

「解説は任せておけ。瞬たちの同人誌の編集で慣れているから、お茶の子さいさいだ」

「はい……。どうぞよろしくお願いします……」
氷の国の氷河は生意気にも、たれたれ氷河さんとたれたれ瞬ちゃんの言葉に、かなりのショックを受けてしまったのです。

けれど、
「やったー! これで間に合うぞ!」
9号は、『氷の国の宇宙人襲撃裁判顛末記』が発売延期にならなければそれでOKでした。

「ほんと、間に合ってよかったね〜vv」× 14
小人たちも、結果がよければそれで満足でした。


「…………」
小人たちと一緒に喜んでやりたいけれど、今いち素直に喜べない氷の国の氷河は、心中とても複雑でしたけどもね。


何はともあれ、ついに、『氷の国の宇宙人襲撃裁判顛末記』の原稿は出揃いました。
氷の国の氷河の心の傷にはお構いなしで、『氷の国の宇宙人襲撃裁判顛末記』発行のための作業はまだまだ続きます。