かくして、氷の国の氷瞬城の地下印刷工場で、氷の国の氷河の印刷&製本作業が始まったのです。

氷の国の氷河は死ぬ気で頑張りました。
寝ている暇もなければ、ご飯を食べる暇もありません。
小人たちの応援ダンスと、応援ダンスで疲れて眠ってしまった小人たちの安らかな寝顔だけを糧にして、氷の国の氷河はひたすら頑張りました。


その結果。

2日間で、氷の国の氷河の体重は5キロ減りました。
150万部が刷り終わる頃には、氷の国の氷河の顔つきはすっかり変わってしまっていました。
頬はこけてやつれ果て、眼光鋭く、まるで目だけで生きているよう。
けれど、小人たちに期待されて応援されたなら、それに応えずにいることはできない氷の国の氷河だったのです。



「これなら、発売予定には間に合いそうだね。発売日には世界中の本屋さんでパニックが起きるぞ、きっと」
人間の限界を超えた氷の国の氷河の働きに、9号は至極満足していました。

けれど、9号以外の小人たちは、そこまでビジネスライクにはできていません。
小人たちは、女工哀史なんか目じゃないくらいに過酷な労働に耐えている氷の国の氷河が心配でなりませんでした。

「でも、9号……。氷河、大丈夫かしら。氷河ったら、生霊さんより幽霊みたいになっちゃったよ?」
「うん……。『氷河、大丈夫?』ってきいても、氷河ったら、疲れきった顔で笑うだけなんだよ」
「氷河、死んじゃわない?」
「僕、氷河死ぬのいやだ」
「僕だって、そんなの嫌だよ〜。そんなこと言わないで〜っっ;;」


けれど、そんなことになっても、9号は冷静でした。

「みんな落ち着いて! 人はそんなに簡単に死ぬものじゃないよ」
「でも〜」× 14
「僕たちの氷河が、僕たちをおいて死んじゃうはずないじゃない」
「そうだけどぉ〜」× 14

それは信じていましたけれど、小人たちはやっぱり幽霊みたいになってしまった氷の国の氷河が心配でたまらなかったのです。