氷の国の氷河が、館内放送で、
『ファイヤー! ファイヤー! ファイヤーっっ !! 』
と声を嗄らして叫ぶ中、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリーク数百万人は、数時間をかけて、楽しい小人さんショッピングを終えました。

もちろん、9号が用意した商品は全て売り切れ、宅急便の小人さん印のダンボール箱すら一つとして残っていません。
9号は、すかさず、今度は、各商品の第二弾搬入の指示を飛ばします。
「第2問が出題されたら、またお買い物客が来るからね! それまでに品切れのないように全ての商品を用意するんだよっ!」
ビジネスに燃える9号ちゃんの横顔は、実に凛々しいものでした。



――というように、舞台裏では、9号ちゃんと小人さん商店街出店部隊が大忙しで走り回っていましたが、その頃、表舞台の方では……。

西館と東館の間で、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリーク数百万人が、相変わらず右往左往していました。

「で、結局、私たちは西館に行けばいいの? それともやっぱり東館なのっ !? 」
「2人のうちの1人が3号ちゃんなのは確かなのよ! 私は、あの時の3号ちゃんの泣き顔にほだされて(?)3号ちゃんフリークになったんだもの! でも、その相手の顔がーっっ! 顔は思い出せるけど、それが何号ちゃんなのかがわからないー !! 」
「小人さんたちの顔がみんな同じなことが、こんなところでアダになるとはーっ!」
「小人さんたちは15人で1人なんだから、何号ちゃんでも同じことじゃないかー!」
等々、誰にもクイズの答えがわからなかったのです。


ちょっとクイズ慣れたフリークさんになると、
「ふっ。こういう時こそ、ネットを活用しなきゃな」
とか言いながら、iモードで、小人さん公式サイトにアクセスです。

しかし。
「なんだよ、これー! チューリップ畑って、iモード対応できてないのかよーっっ!」
ということで、残念でした。

もっとツワモノになると、ちゃんとノートパソコンを持参しています。
ケータイ電話に向かって怒鳴り声をあげている数十万人の小人さんフリークを横目に見ながら、さっそくパソコンとケータイ電話を使ってモバイル接続。

けれど、有明に集っていた小人さんフリーク数百万人のうちの数十万人がツワモノだったからたまりません。
一度にアクセスが集中したせいで、日本最強を誇るDTIさんのサーバーがあっさりダウン。
数十万人のアクセスがあったにも関わらず、チューリップ畑のカウンターは1つも増えることはなかったのでした。


『あと30分のうちに移動を終了してくださいー !! ファイヤー! ファイヤー! ファイヤーっっ !! 』
氷の国の氷河の声は、ほとんど変声期の青少年です。


残り時間30分と聞いて、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリーク数百万人は大慌て。
「西でも東でも、とにかくどっちかの館に行ってないと、失格になるー!」
「どっちかに行くんだーっ!」
「ちょっと、通してよ! 私、東館に行くんだからっ!」
「誰だよ、西館への通路に座りこんで、同人誌読みふけってる奴は!」
「あーん、私の小人さんストラップがどっかにいっちゃったー!」

すったもんだの大混乱は、結局、最後の30分が過ぎても収束しませんでした。

そうして。
イエスの西館に入れたのは、178万8707人。
ノーの東館に入れたのは、220万1002人。
西にも東にも入れずに失格になった小人さんフリーク、422万人強。


『失格になったみんなは残念だったね。この悔しさを来年のサイン会にぶつけてくれたまえ! 来年のサイン会パンフレット用のマンガレポートは、来週から受け付けるから、どんどん氷の国に送ってくれ! 申し込み用紙は通販しないから、所定の場所で購入してから退場すること。勇者たちよ、来年、また、この場所で会おう!』
氷の国の氷河は、声だけでなく口調まで変わってしまっています。


『さて、見事に東西の館に辿り付いた挑戦者諸君、おめでとう! では早速、正解を発表だ、ファイヤー !!


正解が発表されると、西館では絶望の叫びが、東館では歓喜の叫びが湧き起こり、有明を大きく揺るがしました。


『西館の諸君、残念だったね! しかし、我々は君達のチャレンジ精神を忘れない! 来年、また、ここで会おう! そして、東館に残った挑戦者たちのこれからの戦いを見守ってくれ!』

第1問で早くも敗れ去った小人さんフリーク178万8707人は、泣きながら、残念賞の小人さん饅頭詰め合わせを受け取って、ビッグサイトを去っていきました。

敗者たちは、バスやゆりかもめや臨海線や水上バスの窓から、
「みんなーっ、俺たちの分も頑張ってくれよー!」
「私の代わりに、絶対氷の国に行ってねーっっ!」
と、つい数時間前まではライバルだったフリークたちに、応援エールを残して、有明を去っていったのです。
彼らの夏は、こうして終わりを告げたのでした。



しかし!

『それでは第2問! まだまだ人気の、めーじゃ製菓365日のぱんつチョコ。めーじゃ製菓のおじさんたちと契約を結ぶ時、9号が提示した条件は、信州巨峰プリッツ1年分と夕張メロンポッキー1年分、津軽りんごコロンを1年分! その条件に、信州蕎麦プリッツを1箱を追加したのは、2号である。イエスかノーか! イエスの人は西館、ノーの人は東館へ、大移動だ! ファイヤー !! 』


氷の国の氷河と小人たちと、国を超え、宗教を超え、民族をも超えた小人さんフリーク220万1002人の夏はまだまだ続きます……。