それからまた少し経ったある日のこと。 小人たちの中の一人が言いました。 「ねぇ、今度はりんごのタルトが食べたいねぇ」 「うん、食べたいね」 「で……でも、りんごの実は、さくらんぼよりプラムより大きくて重いよ。りんご爆弾に当たったら、ほんとに僕たち死んじゃうかもしれない……」 「でも、たれたれ瞬ちゃんのりんごタルトには、命をかける価値があると思わない?」 「う…うん、そうだね。命をかける価値があるね……!」 小人たちの心はいつも一つです。 「よし、やろう!」 「たれたれ瞬ちゃんのりんごタルトに僕らの命をかけるんだ!」 「おーっっ !! 」× 15 さて、そんなふうに、決死の覚悟で雄叫びをあげた小人たちを、扉の陰から、氷の国の氷河が悲しそうに見詰めていました。 (小人たちは、なぜ、俺に一言、『りんごを取ってくれ』と言ってくれないんだ……!) 氷の国の氷河は、それが悲しくて、氷の国の国会議事室の扉の陰で、さめざめと泣いていたのです。 けれど、小人たちは、なにしろ最初のさくらんぼタルトを手に入れた事情が事情でしたから、氷の国の氷河に頼んでりんごを取ってもらうことなんて、思いつきもしなかったのです。 小人たちは、おいしいタルトを手に入れるためには、自分たちの命を懸けなければならないのだと思い込んでいました。 小人たちは、楽をして(?)おいしいタルトを手に入れようなんて、安易なことは考えていなかったのです。 命を懸けて手にいれたものにこそ真の価値があるのだということを、小人たちは知っていたのです。 小人たちは、そうして、一列縦隊、決死の覚悟でりんごの木の下に向かって歩き始めたのでした……。 氷の国が金色に染まる秋は、もうすぐそこ。 そろそろ、氷の国の金色の英雄が登場しますよ。 |