夏の風物詩 I




氷の国にも夏がきました。
氷の国の夏はとても短いのですが、暑い時はとてもとても暑いのです。

いつも明るく元気いっぱいの小人たちも、この暑さにはぐったりうんざり。
なにしろ、朝のおめざ体操の時刻には、もう気温が30度を超えているんですからね。
それでなくても、氷の国の住人たちは暑さに慣れていないのに。


「暑いね〜」
「さっき、向こうで氷河が行き倒れてたよ」
「暑いもんね〜」
「うん、暑いからね〜」
「…………」


「暑いね〜」
「森のみんなは大丈夫かな」
「こないだ、クマさんたち、ほんとは冬眠じゃなく夏眠したいって言ってたよ」
「暑いもんね〜」
「うん、暑いからね〜」
「…………」


いつもなら、ポンポンとピンポン玉の応酬のように調子よく続く小人たちの会話も、この暑さでは、どうにもこうにも途切れがちです。

ついに、暑さに耐えかねた5号が叫びました。
「う〜ん、僕、もう我慢できないっ!」

7号がそれに続きます。
「僕もーっ!」

「5号、7号ったらだらしないよ! でも僕も〜」
「同じく、僕も」
「上に同じ〜」
「以下同文〜♪」


暑くても(暑いからこそ?)、15人の心はいつもひとつです。
「……仕方ないね。満場一致ってことで、じゃあ、僕もv」
最後に9号がそう言って、議案は可決。

小人たちは全員服を脱いで、ぱんついっちょ♪ になりました。
ぱんつはもちろん、氷の国の氷河お手製、綿100パーセントの刺繍入り。


「お行儀悪いかな……」
「お客様が来たら恥ずかしいね」
「今誰か来たらどうしよう……?」
「お風呂に入るとこなんですって言えば?」
「そっか」
「こんな昼間っからお風呂に入るの?」
「それも変かもね……」

なにしろ、小人たちには恥じらいというものがありました。
ぱんついっちょ♪ になったからって、恥じらいまで脱ぎ捨ててしまったわけではないのです。

そこで、9号が、ぱんついっちょ状態と恥じらいを両立させる議案を提出です。
「昼間っからでも、外ででも、他の人がいても、ぱんついっちょ♪ になっても、恥ずかしくないところがあるよ」

「え〜? どこどこ?」

プール だよ」

「おおおおおおお〜 !! 」× 14

9号の素晴らしい提案に、一同は色めき立ちました。
「そっか! 夏だもんね!」
「わ〜い、プール〜♪」


そうと決まれば、即実行。
小人たちは、廊下の端っこで行き倒れてた氷の国の氷河を起こして、15人分の水着と小人用のちっちゃなプールを作ってもらいました。

ちょうど、夏コミでファンの人から差し入れでもらったクッキーの空き缶がたくさんあったので、それにお水を入れて、大小様々のプールのできあがりです。


小人たちは、その日、きゃあきゃあ言いながら水遊びをいっぱい楽しみました。
それから、遊び疲れた小人たちは、ふかふかのタオルのお布団でお昼寝です。

氷の国の氷河は、小人たちのプールのお時間の間中、波を作ったり、海坊主になったり、救命隊ごっこをしたり、小人たちのおやつや飲み物を用意する海の家のおじさん(?)になったりで、これまた疲れきって、部屋の片隅でのびています。


こんなふうに、氷の国の夏の1日は過ぎていくのです。