生霊さん再び




そんなわけで、毎晩夜中に起き出しては、暗い廊下を眺めるのが癖になってしまった小人たちでしたが、セクシーな生霊さんにはなかなか会えませんでした。

会いたいのに会えない日が半月ほど続いたでしょうか。
ある夜、小人たちは、暗い廊下に向かって、みんなで生霊さんを呼んでみました。

「生霊さーん!」× 15


すると、なんということでしょう。

「呼んだかい、可愛子ちゃんたち」
生霊さんは、実にあっさりと、その姿を小人たちの前に現してくれたのです。

「わーい、生霊さんだーっっ♪」× 15
小人たちは、全員、大喜びです。

小人たちは、生霊さんの周りにわらわらと駆け寄って、
「13号の言った通り、ほんとにせくしーな目をしてるーv」
「ほんとだー」
「かーっこいーいv」
と盛大に盛り上がり始めました。


「俺をかわいそうでなくしてくれる気になったのかな、可愛子ちゃんたち?」

生霊さんに、セクシーな目で見詰められて、 小人たちは全員、
『ぽ〜っ☆』× 15 

小人たちが、ぽ〜っ☆ 状態から覚めるまでには、結構な時間がかかりました。
小人たちは、それまでセクシーな氷河さんというと、たれたれ氷河さんしか知りませんでしたし、たれたれ氷河さんのセクシーな目は大抵たれたれ瞬ちゃんにだけ向けられていましたから、なにしろ"セクシー"に免疫がなかったのです。


「あ……うん。あのね、僕たち、生霊さんに、13号だけじゃなく、僕たちともお話してほしいの」
「僕たちは15人で1人だもんね」
「そうそうそう」× 15

こくこく頷く小人たちに、生霊さんは言いました。
「じゃあ、合体してごらん」

「え?」
「君たちは15人で1人なんだろう?」
「うん、そうだけど、あのね、あのね。僕たち、13号から生霊さんのお話聞いて、考えたの」

「ふぅん、何を?」

生霊さんに、セクシーな瞳で尋ねられた小人たちは、またまた全員が、
『ぽ〜っ☆』× 15 

小人たちが正気に戻るまでには、またまたまた結構な時間がかかってしまいました。
「あ、ごめんなさい。また、ぽ〜っ☆ としちゃった。んとんと、あのね。生霊さんがかわいそうなのは、ひとりぽっちで寂しいからだと思うの」

「可愛子ちゃんたちは、可愛いだけでなく、お利巧だねぇ。その通りだよ」
「だから、僕たち、生霊さんが寂しくならないように、生霊さんといっぱいお話してあげる」
「大勢でいると寂しくないと思うの」
「僕たちがそうだもんね〜」× 15

「うーん。ちょっと違うんだなぁ」
小人たちの可愛らしい提案に、生霊さんが困ったように苦笑します。
その様子も、やっぱり、とってもセクシーでした。

「どう違うの?」
「俺はね、君たちに合体してもらいたいんだよ。そうすれば、あの父性愛のバカ氷河もその気になるだろう。なにしろ、君たちは可愛いからねぇ」
生霊さんは、セクシー全開です。

小人たちは、またまたまた、
『ぽ〜っ☆』× 15 

「そうしたら、俺はあのバカ氷河の中に戻って、合体したキミたちと合体する」

「え?」
またまたまたまた、セクシーな生霊さんにぽ〜っ☆ となっていた小人たちは、生霊さんのその言葉が理解できなくて、ちょっとだけ我に返りました。

「僕たちが合体して、生霊さんは僕たちの氷河と合体して、合体した僕たちと合体した氷河と生霊さんが、また合体するの?」
「そうだよ」
「そうしたら、みんな合体して、1人になっちゃうよ?」
「素敵だろう?」
小人たちにはまるで意味の通じないことを言う生霊さんでしたが、ともかくセクシーなことに変わりはありません。

小人たちは、またまたまたまたまた、
『ぽ〜☆』× 15 


「あ、でも、そうしたら、1人になった僕たちは誰とお話するの?」

「え? あ、いや、それは……氷河と君たちの合体は比喩的表現で……」
「1人だと寂しいよねぇ」
「うん、お話できる人がいないと寂しいよ」
「僕たち、生霊さんを寂しくなくしてあげたいのに」

「…………」
小人たちの、小人たちなりに優しいその言葉に、生霊さんはセクシーに困ってしまいました。

そして、セクシーに切なく微笑しました。
「可愛子ちゃんたちは、可愛いだけでなく優しいねぇ。あのバカ氷河が俺を追い出すわけだ」

『ぽ〜☆』× 15 

実体のない手で、小人たちの頭を撫で撫ですると、生霊さんは、相変わらず、ぽ〜っ☆ としたままの小人たちに言いました。
「さて、今夜はもう退散するかな。これ以上、君たちと一緒にいたら、俺の中からまで悪い心が分離してしまいそうだからね」

「え?」
「そんな分離を繰り返していったら、最後に生まれるのは、きっと悪魔に違いない」

「えええええっ !? 」
小人たちは、悪魔なんていない世界の住人です。
ですから、生霊さんのその言葉にびっくりしました。

が、生霊さんは、その言葉の意味など説明する気はないようでした。
そんなことになってはいけないと、生霊さん自身も思っていたからなのでしょう。
代わりに、
「可愛子ちゃんたち、可愛すぎるのもほどほどにするんだよ。わかったかい?」
と言って、セクシーな目で小人たちにウインク。

小人たちは、ぽ〜っ☆ としながら、訳もわからずに、
「は〜い」× 15 
と良い子のお返事です。


そうして、小人たちのそのお返事を聞いた生霊さんは、やっぱりセクシーに微笑しながら、すうっと消えていってしまったのでした。