ピンク : 氷の国の小人たち 1〜8号・10〜15号ちゃん
オレンジ色 : 9号ちゃん
: 氷の国の氷河
: プルーストさん 心の声



Q18 どういうことが、あなたにとって最大の不幸になりますか?



「僕たち、いつも明るく元気にしてるけどさ、実は苦しいことや悲しいこともいっぱい経験してきたよね……」
「うんうん。たくさんの苦難を、力を合わせて乗り越えてきたよね」

「僕がいちばん悲しかったことは、夏場にさ、明日の楽しみにとっておいたイチゴのデコレーションケーキが、折りからの暑さでダメになっちゃってた時だったなぁ……」
「あれは悲しかったよね」
「みんなで、わんわん泣いたもんね」

「梅雨の時期に、ほんの2、3時間おいといただけなのに、フレンチトーストにカビが生えてたこともあったね」
「あれは、トーストにかけるシロップが見つからなくて、探してる間にカビカビになっちゃってたんだよね」
「あの時も辛かったね……」
「みんなで、おいおい泣いたよね」

「特大モンブランケーキを床にひっくり返しちゃったこともあったね」
「氷河が落っことしたんだよね」
「ショックだったよね」
「みんなで、あんあん泣いたっけ……」
「うん。みんなで、あんあん泣いたよね」

「僕はね、コミケで、僕たちの本が売れた時、お代の10円玉がどこかに転がっていっちゃった時、絶望的な気分になったよ」
「あの時は、お客様に踏み潰されないように緊張しながら、一生懸命捜したねぇ」
「ちょっと恐かったよね」
「頑張って頑張って捜したのに、見つけられたのは、どっかのお姉さんが落っことしたコンタクトレンズだけだった」
「でも、あのお姉さん、すごく喜んで、クッキーを置いてってくれたね」
「不幸中の幸いだったよね」
「でも、僕は、あの時の悲しみがいまだに忘れられないよ」
「9号があんまり泣くから、僕たちもつられて泣いちゃって、泣きながら、『9号泣かないで』のダンスを踊ったよね」
「あの時も、みんな、思いっきり泣いたねぇ」

「たくさんたくさん悲しいことがあったねぇ、僕たちも」
「うん。それでも、僕たちがその悲しみから立ち直ってこれたのはさ、僕たちがひとりぽっちじゃなかったからだと思うんだ」
「みんながいてくれたからだよね」
「僕たち、励まし合って、助け合って、今日の日まで生きてきたんだよね」
「感動的だよね〜」
「不幸って、幸せを2倍3倍に感じるためのバニラエッセンスだよね!」
「バニラの匂い、僕、大好き〜vv」
「僕も僕も〜」

「ふわわわわ〜ん(←バニラの香りで、とっても幸せ)」× 14
「はにゃららら〜ん(←ダイヤを抱きしめて、とっても幸せ)」


(神様と人生に愛されている小人さんたちにも、それなりに辛いことはあったんやな〜。てことは、神様にも人生にも(あんまり)愛されていない(ように見える)氷の国の氷河はんの人生は、さぞかし不幸てんこ盛りなんやろなぁ……)


「小人たちの足と足を合わせて、しあわせ〜vv へろへろへ〜∞∞∞」


(あかん。氷の国の氷河はんは、今、幸せの絶頂にいるみたいや)


氷の国の氷河の最大の不幸──。
それは、もしかしたら、ちょうちょ乱舞の受験勉強の夢から醒めた時、彼の許を訪れるものなのかもしれません。
せめて、4号ちゃんが沼の主からもらったご褒美のダイヤを、9号ちゃんが裏口入学資金にまわしてくれればいいのですが、9号ちゃんがそんなことで無駄使いをするはずがないのでした……。