ピンク | : 氷の国の小人たち 1〜8号・10〜15号ちゃん
オレンジ色
| : 9号ちゃん
| 青
| : 氷の国の氷河
| 紫
| : プルーストさん 心の声
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Q32 手に入れたい自然の恵み |
「ノーベルンルン賞!」× 15 「それは自然の恵みではないのでは〜……?」 「そんなことないよ! 氷河が刺繍がうまくなったのはなぜ?」 「そりゃあ、おまえたちに可愛いぱんつを穿かせてやりたいな〜と思って、刺繍針を手にしたのが最初の最初だが……」 「それは、氷河の僕たちへの愛ゆえのことだよね!」 「まあ、そういうことになるかな……」 「人が人を愛せるってことは、大いなる自然の恵みだよ! その自然の恵みが大きく大きく成長して、その結果として、ノーベルンルン芸術賞が僕たちのものになるんだ!」 「ま、まあ……そういう考え方もあるかもしれないが……」 「あるに決まってるじゃない! 氷河の愛は素晴らしい自然の恵みだよ!」 「だよね〜vv」× 15 「はあ……」 「ところで、9号。ノーベルンルン賞はどうすればもらえるの?」 「うん。僕の調査したところによると、スウェーデンデン国の王立科学アカデミーや王立芸術クラブなんかの選考機関が話し合いで決めるらしいんだ。だから、その選考機関には、世界中から、ノーベルンルン賞にふさわしい人を推薦する手紙が送られてるんだって」 「お手紙か〜。僕たちが一人10枚書いたら、150枚のお手紙が出せるね」 「可愛い絵なんかも同封したら、印象がよくなるかもしれないね」 「うん。もちろん、僕たちも手紙は書く。でも、どうせなら、僕たちだけでなく、世界中の人たちに協力してもらおうと思うんだ」 「え? どうやって?」 「もちろん、宣伝あるのみだよ! 氷の森のみんなや、コミケのお客さんたちや、ピアノ演叩会のお客さんたちに、僕たちの氷河をノーベルンルン賞に推薦するお手紙を書いてくださいって、お願いするんだ。あ、あと、めーじゃ製菓のCMでも、お願いすることにしよう。ちょうど今、冬季限定チョコのキャンペーン中だから、それに便乗させてもらうことにするよ」 「あ〜……それは、自然の恵みというより、思いっきり作為的行為なのでは……」 「あ、メルティーキス、僕、大好きー!」 「毎年、新しく出ては消えていく他の期間限定チョコとは、ちょっと違うよね」 「冬の定番だもんね」 「このキャンペーンで、氷河の推薦状を10枚出してくれた人たちの中から抽選で10000名様に、氷河の芸術作品をプレゼントすることにしよう。そうすれば、氷河の刺繍はテレビ放映されて、新聞や雑誌にも載って、認知度があがるし、なにより、氷河の刺繍の素晴らしさをみんなが目にすることになるんだ」 「うんうん」× 14 「ついでに、僕たちにはCM出演料が入るし、一石二鳥だよ。お金もかからないしね」 「さすがは9号、ナイスアイデア〜vv」 「ふっ、まあね」 「でも、それは、やっぱり裏工作というか、組織票というか、自然の恵みじゃないというか、何というか……」 「さあ、そういうわけだから、氷河! 今すぐ、キャンペーン商品の刺繍作りにとりかかってね! そうだね、100枚の大判タペストリーと、200枚のベッドカバーと、300個の布製ポーチと、400枚のTシャツと9000枚のハンカチでいいよ」 「そんなご無体な……」 「1日100枚ずつ仕上げていけば、冬のキャンペーンの締め切り日に間に合うから、余裕だよ!」 「しっしかし〜;;」 「わーい、僕たちの氷河がノーベルンルン賞だーっ!」 「賞金!」 「海外旅行!」 「舞踏会!」 「晩餐会!」 「ノーベルンルン賞授賞式の記者会見!」 「僕たちの氷河は有名になって、世界中の人たちが、僕たちの氷河の素晴らしさを認めてくれるようになるんだ!」 「そうなったら、僕たち、鼻が高いよねー!!」 「大得意だよねっ!」 「でも、自慢してもいいんだよ! なんたって、僕たちの氷河は、本当に素晴らしいんだからっ!」 「もちろんさ!」× 14 「あ……あああ〜……(←嫌だの無理だの、とても言えない)」 (あやややや〜;; これは、大検を受けるのと、どっちが苦労がないんやろな〜。前門の虎、後門の狼、来年は羊年。大検も地獄、ノーベルンルン賞も地獄で、氷の国の氷河はん、生きて新年を迎えられるのやろか〜?) 「1日100枚の刺繍……。1日が100時間欲しい……」 (で、氷の国の氷河はんが欲しい自然の恵みは、時間っちゅうことで) いつまでも、どこまでも、どんなことになっても、苦労の絶えない氷の国の氷河。 もしかすると、彼は、小人さんたち以上に苦労に愛されているのかもしれません。 背中に背負う悲哀も重たげに、氷の国の氷河よ、どこへ行く……。 |