「というわけで――」 9号の報告を、メリーケンケン国・国家安全保障局の局長は、最後まで聞きませんでした。 聞くまでもなく、9号が今回の仕事も華麗に完遂したことがわかっていたからです。 「わかりました。大統領にはそう指示しておきます。いや、犯人のことは報告の必要もないか」 局長の粋な計らいに、9号は満足気に頷きました。 それから、9号は、局長のデスクの上で、ふっと寂しげに呟いたのです。 「でも……どうして、みんな気付いてないんだろうね。この地上にいる人は誰だって、世界を動かしてるのに……」 「009ちゃん……」 クールな中に熱い思いを秘めた9号の横顔に、局長は、しばしうっとりです。 幾度か9号の仕事振りに接しているうちに、局長は、9号に男惚れしてしまっていました。 9号の、ふっくらと柔らかい曲線のニヒルな背中にしびれまくっていたのです。 そして、局長は、今更ながらに、9号を自分に紹介してくれた、近所のドラッグストアの おばちゃんに感謝してしまったのでした。 素晴らしい出会いをどうもありがとう――と。 「あ、じゃあ、僕はみんなのとこに帰るよ。また何かあったら呼んでね」 「009ちゃん、どうもありがとう! 世界はまた009ちゃんに救われたよ!」 局長の感謝の言葉が終わった時、彼のデスクの上には、既に9号の姿はありませんでした。 |