小人たちと氷の国の氷河は、15分ほどもそうしていたでしょうか。

右の肩でシーツを抑えていた4号が、恐る恐る口を開きました。

「ねえ……いつまでこうしてるの」
「う…うん」
「僕、手がしびれてきちゃった」
「うん、僕も……」
「でも、氷河に王子様でいてもらうためなんだから」
「うん……」
「でも…腕が痛いよ?」
「うん、痛いね……」

小人たちは頑張ったのです。
愛する氷の国の氷河に王子様でいてもらうために。

けれど、やがて限界の時が訪れました。

「あーん、僕、もう駄目ーっっ !! 」

冠の一部になっていた15号が、氷の国の氷河の頭上から股間にまっ逆さま。
それが合図だったように、小人たちは、まるで地上での短い命を燃焼し尽くした秋の蝉のように、ぼとぼとぼとっとベッドの上に落っこちてしまいました。

「だ、大丈夫かおまえたち !? 」

氷の国の氷河が、大慌てで、ベッドに落っこちた小人たちを掻き集めます。

「うん……大丈夫だよ」
小人たちは、小さな手で頭やお尻をさすりながら、氷の国の氷河に頷きました。
15人全員の無事を確認して、氷の国の氷河は、ほっと安堵の息をついたのです。

「無茶するからだぞ」
人差し指で小人たちの頭やお尻を撫でてやりながら、氷の国の氷河は、それでも微笑みながら言いました。

「うん、ごめんね、氷河。ずっと王子様でいさせてあげられなくて」
「なに、いいさ」

王子様の冠やマントがなくても、小人たちがそう思ってくれているのなら、氷の国の氷河はいつでも(気持ちだけは)王子様でした。
氷の国の氷河は、それだけで、(身体はともかく)心は十分に満たされたのです。


「でも、氷河は王子様だから、僕たちといつまでもいつまでも幸せに暮らすんだよ」
「そうだな」

氷河が頷くのを見て、小人たちは嬉しそうに微笑いました。
そして、合体ごっこの緊張から解放されて気が緩んだのか、全員がその場にぺたりと座り込みました。

「僕……ちょっと疲れちゃった」
「僕も」

一人がこしこしと目をこすると、あとの14人も一斉にこしこしこし。


「だから、言ったろう。子供はちゃんとお昼寝するもんなんだって」

「うん……僕、こどもじゃないけど、お昼寝する……」
と言って、3号がベッドの上に、こてっ☆

「僕も」
と言って、8号もベッドの上に、こてっ☆

「おやすみなさーい……」
と言って、12号もベッドの上に、こてっ☆


そんなふうにして、こてこてこててててて〜☆ と、小人たちは全員、ドミノのようにベッドに倒れ込んでしまいました。

遊び疲れて眠りに落ちた小人たちに、氷の国の氷河は、小人たちのお昼寝用特製タオルケットをかけてやったのです。






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