「氷河―っっ! 見て見てーっ! くまさんだよ!」 「僕たちのくまさんー♪」 「色違いくまさんなのー!」 「とってもとっても可愛いのー!」 「そうか、気に入ったか。よかったな」 テーブルの上ではしゃぐ小人たちの満面の笑みを見て、氷の国の氷河も嬉しそうです。 なにしろ、それは、氷の国の氷河の苦心の作。 新年を迎えた頃から、よなべ仕事を続けて、小人たちのツリーの飾りつけも手伝わずに仕上げたカラフルくまさんでしたから。 小人たちに気に入ってもらえたのなら、氷の国の氷河も、目をしょぼつかせてよなべ仕事をした甲斐があったというものです。 ところが、ここで、ちょっとした大事件。 カラフルくまさんのプレゼントがあんまり嬉しかったのでしょう。 するするするっ☆ と氷の国の氷河の腕を登った15号が、氷の国の氷河のほっぺにちゅうをして、 「ありがとう、氷河!」 ――と言ってしまったのです。 「え?」 「あっ、15号ったらバカ!」 「氷河がサンタさんなのは秘密のことなのに!」 「…………」 何ということでしょう。 氷の国の氷河は大ショックです。 小人たちが、サンタクロースの正体を知っているなんて。 「おまえたち……」 「あ……あのね、去年、氷河ったら、プレゼントを置きに来た時、椅子に蹴つまづいて転んじゃったでしょう。僕たち、その時、サンタさんの正体がわかっちゃったの……」 「ご……ごめんね、氷河」 「そうか……」 自分のドジのせいとは言え、氷の国の氷河は、超がっかりです。 氷の国の氷河は、小人たちに、いつまでもいつまでもサンタクロースの存在を信じていてほしかったのでした。 「……がっかりしただろう?」 「えー、どーして?」 「俺がサンタクロースじゃ、つまらないじゃないか」 「そんなことないよ、僕たち、氷河がサンタさんでとっても嬉しかったもの」 「そ…そうか?」 「知らないおじいさんだったら、恐いよね」 「うんうん。泥棒と区別できないよね」 「…………」 小人たちは、なんだかとっても現実的です。 「おじいさんだったら、世界中まわるのは大変だけど、氷河は元気なワカモノだもんね」 「僕たちの氷河がサンタクロースだったなんて、とってもびっくりしたけど、すっごく嬉しかったし、それに、みんなに自慢できるよね!」 「世界中の子供たちが、氷河を待ってるんだよね」 「僕たちも鼻が高いよね!」 「…………」 とっても現実的な小人たちは、どうやら、氷河がサンタクロースの役を演じているのではなく、氷河がサンタクロース本人だと思い込んでいるようでした。 「うふふふ。僕たちの氷河がサンタさん♪」 「…………」 氷の国の氷河があっけにとられて何も言えずにいるのを、秘密がバレてびっくりしたせいだと思ったのでしょう。 小人たちは、氷の国の氷河を見上げて、ちょっと首をかしげて言いました。 「僕たち、オトナだから、氷河のために、気付いてない振りしててあげようと思ったんだけど……」 「いいよね、他の人たちには内緒にしておいてあげるから」 「僕たち、誰にも言わないもん」 「僕たちと氷河だけの秘密だよ」 小人たちは、みんな、とても真剣な眼差しで氷の国の氷河を見詰めています。 それはそうです。 これは、世界中の人たちに内緒の、大事な大事な秘密の話ですもの。 「……そうだな」 少しだけ悩んだのですが、結局、氷の国の氷河は、小人たちの誤解を解くのはやめることにしました。 きっと、誤解を誤解のままにしておいても、サンタさんから文句は来ないでしょうしね。 氷の国の氷河が小人たちに微笑みかけると、小人たちも、ぱっ☆ と明るい笑顔になったのでした。 |