もちろん、犯人を捕まえるには情報収集が必須です。 みんなの協力を仰がなければなりません。 そこで、9号が考えだしたのは、お団子2串とワンドリンク付きの小人さんライブを開催することでした。 江戸の町のみんなの協力を仰いで、犯人包囲網を徐々に狭めていき、最後の最後で岡っ引き氷河が華麗なる十手さばきを披露する――というのが、9号の計画でした。 9号は、ちょうど休演中だった歌舞伎座を借りると、特別製の極小ステージを設置して、そこでライブのお客さんたちに訴えることにしたのです。 「あのね、お団子泥棒はね、すごく動きが素早い大人の男の人だったよ」 「顔は見えなかったけど、いい仕立ての着物を着てたよね」 「でも、薄汚れてた。ちゃんとお洗濯してない感じ」 「背は、氷河より低くて、僕たちより高かったね」 「うんうん、そうだったね」 『岡っ引き氷河より背が低くて、小人たちより背が高い奴なんて、江戸中のほとんど全部の男子が当てはまるじゃないか!』 なんて 突っ込みも入れずに、ライブのお客さんたちは、小人たちの可愛らしい様子にぽわわわわ〜ん☆ と夢見心地。 小人さんライブは、もちろん大成功でした。 なにせ、うまくすれば50両が手に入り、おまけに小人たちの『犯人捕まえてねのお願いダンス』まで見れるとあっては、このイベントが失敗するはずがありません。 小人さんライブは、それから何回も何回も開催され、花のお江戸の団子泥棒騒ぎはますます盛り上がっていったのです。 最終的に、小人さんライブの総動員数は、近松門左衛門の新作浄瑠璃をはるかに凌駕して、動員延べ人数は10万人を超えました。 この頃の江戸の人口は、町方が40〜50万人、武士階級が、旗本・御家人・地方の在京武士等を合わせて同数――と言われる100万都市でしたから、花のお江戸の住人の10人に1人は、小人さんライブを見たことになります。 小人さんライブは整理券事前配布制で入場者数を調整できましたから、用意した団子が足りなくなったり余ったりすることもなく、完璧な収支決算、もちろん大黒字。 9号は、すっかりほくほく顔でした。 |