「こいつぁ、なんてこったい……」

たまたま土間席でライブを立ち見していた雨漏り長屋のクマさんが、うつ伏せに倒れているその男の身体を抱き起こして、驚きの声をあげました。

「クマさん、知ってる人?」
おシゲちゃんに尋ねられたクマさんが、こっくり深く頷きます。

「こちらさんは、俺のことなんざ知るまいがね。おい、旦那! 馬苦度屋の若旦那、大丈夫かい !? 」

「う……」
クマさんにほっぺたを2、3度叩かれて、団子泥棒は意識を取り戻しました。

「馬苦度屋の若旦那? この人が?」


「えーっ、じゃあ、この人が、あの3代続いた馬苦度屋を、へたっぴ経営で潰しちゃった馬苦度屋さんのご主人なの〜っっ !? 」

9号の、事実なだけにきつい一言に、馬苦度屋の(元)主人は、がっくりと項垂れてしまったのでした。







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