長い長い時間が過ぎて――やがて、9号は、それまで馬苦度屋の元主人を睨んでいた顔を、クマさんとおシゲちゃんに向けました。
「クマさん、おシゲちゃん。もうしばらく、長屋の雨漏り、我慢してくれる?」

「おうよ!」
「私たち、慣れてるもの。へっちゃらよ」


それから、仲間たちを見やりました。
「みんな……。もう少し、貧乏暮らし我慢してくれる?」

「僕たちの心は一つだよ!」
「そうだよ! 9号、そんなことも忘れちゃったの?」


最後に、9号は、岡っ引き氷河を切ない目で見上げました。
「氷河……。所帯持つの、もっと先のことになってもいいかな……」

9号の瞳は、涙でいっぱいでした。


「……俺の願いは、おまえたちが元気で優しくて、おまえたちの心に嘘をつかずに生きていてくれることだけだよ」

「氷河……」
岡っ引き氷河のその答えが合図だったかのように、9号が泣きながら、岡っ引き氷河に飛びついていきます。
「氷河ぁーっっ !! ごめんね、ごめんね。こんなんじゃ、僕、何のためにけちんぼしてるのかわかんないよぉ〜っっ !! 」


その心はいつでも一つの花のお江戸の小人たち。
9号に続いて、小人たちは――1号も2号も3号も4号も5号も6号も7号も8号も10号も11号も12号も13号も14号も15号も――わらわらわらと岡っ引き氷河によじ登ってすがりつき、わんわん泣き出してしまいました。

「大丈夫、俺とおまえの仲間たちは、何もかもわかってるから」
「そーだよ、9号、泣かないでー」
「9号が泣くと、僕たちまで……」

「あーん、あーん、あーん !! 」× 15




――小人さんライブ・ファイナルのエピローグ。
それは、小人たちの切ない泣き声で綴られることになりました。


もちろん、小人さんライブ・ファイナルのお客さんたちは全員、貰い泣きです。



愛と涙と感動の小人さんライブ・ファイナルは、そんなふうにして、愛と涙と感動のうちに幕を閉じたのでした――。







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