場面変わって、こちらは、銭形氷河のいない運命的な出会いを果たした、小人たちとカミュ物理学者とミロ医学者。
礼儀正しいご挨拶を終えると、9号は早速、自分のお仕事にとりかかりました。

「それで、無駄使いをしている人はどっちなの。僕が、お灸を据えてあげるよ!」
「お灸……? それは、日本の代表的な病気治療法だね。君はやり方を知っているのか? こんなに小さな医者が日本にいたとは、何という東洋の神秘!」
「僕はお医者さんなんかじゃないよ! 日本一の節約家だよ!」
「セツヤク科? 君は薬剤師か何かなのか? 何という東洋の神秘!」
「こんな可愛い僕が、どーしてヤクザ屋さんに見えるのっ! 医学者のミロさん、あなた、目が悪いのっ !? 」

ミロ医学者の日本語のヒヤリングと発音が今いちなせいか、9号とミロ医学者の会話は、噛み合っているようで、その実、全然噛み合っていません。
カミュ物理学者は、そんな9号の言葉に感心したように頷きました。
「ミロの病気をずばり言い当てるところを見ると、君はかなりの名医らしいな。見れば、実に賢そうな顔をしている」

「え……?」
9号は、カミュ物理学者に褒められて、ちょっと嬉しくなりました。
「えへへへへ〜、僕、そんなに可愛い?」

「…………」
カミュ物理学者は、そんなことは一言も言っていなかったのですが、彼はとりあえず、9号の勘違いを訂正することはしませんでした。

途端に、小人たちが全員、ぱっと明るい顔になります。
「9号のこと、可愛いだって」
「僕たちは15人でひとりだから、9号が可愛いってことは、僕たちも可愛いってことだよね」
「あの赤い髪の人、いい人だね」
「正直者だよね」
「僕もそう思った〜」
「僕も僕も〜」
「それに比べて……」

15人の小人たちに、一斉に、じと目を向けられたミロ医学者は、たじたじです。
彼は大慌てに慌てて、小人たちに言いました。
「わっ……私ももちろん、可愛い子たちだな〜と、初めて会った時から思ってたさ」

ミロ医学者の言葉を聞いた小人たちは、再度、笑顔全開です。
「わーい、この金髪の人もいい人だよ〜!」
「正直者だね〜」
「氷河と同じ色の髪だしね〜! はっ☆」

事ここに至って、やっと!

「あれ〜??」× 15
小人たちは、この場に銭形氷河がいないことに気付きました。







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