ログレスの王の妹姫――実は弟君なのですが――がこの世に生を受けた時、その赤子は、幾人もの高名な魔術師たちに、『この者を手に入れる者は“王の中の王”となるだろう』という予言を受けました。 ログレスの前国王は、“王の中の王”とは、おそらく、世界中で最も騎士道精神の発達した理想の国、ログレスの王のことだろうと考えました。 ログレスは長子相続が国法でしたから、未来の王の弟がそんな予言を受けたとあっては、国の乱れるもと。 悩んだ末に、前国王は、その天使のように愛らしい幼子を姫君と偽って育てることを思いついたのです。 それから、10年後、前国王が亡くなると、ログレスの王位は平穏のうちに現在の王に継承されました。 そうして、更に4年。 現在のログレスの王には子がありませんでした。 王は2年前に最愛の王妃を病で亡くしました。他の女性など目に入らぬほどに深く、亡くなった王妃を愛していた王は、いまだに新しい后を迎える様子もありません。 ログレス王は頑健な騎士でしたが、もし彼に万一のことがあったなら、ログレスの王位は妹姫の夫のものになってもおかしくはない状況にあったのです。 もちろん、それは、王の妹姫が真実姫君であったなら、の話ですが。 ログレスの最高の騎士であり、王の臣下でもある円卓の騎士たちは、決してその望みを口にはしませんでしたが、彼等がアンドロメダ姫の夫になりたいと願っていることは、当然、王も知っていました。 |