「ログレスの王は騎士の誓いをたがえるのか」
金髪の騎士は、ログレスの王に約束の履行を迫りました。

しかし、ログレスの王としても、こればかりは了承できることではありません。
「ベンヴィックの王、キグナスとか言ったか。貴婦人への愛というものは、人柄や姿に触れることなく生まれるものではあるまい。貴公は、我が妹を知らぬはずだ。妹は、生まれてこの方、一度として城外に出たことはないのだからな」

「俺が欲しいものはわかっているだろう。貴公の妹姫を得たものが手に入れられる“王の中の王”という最高の栄誉だ。安心するがいい。貴公の妹姫が世に二人といない美姫だとは、俺も思ってはいない。どんなに醜くひねくれた姫でも、騎士が与えると誓い、俺は求めた。これは、騎士と騎士の誓約、王と王の誓約だ。既にアンドロメダ姫は俺の妻だ」

「…………」
どう考えても、このキグナスという名の騎士は、騎士道の実践者ではありません。
王への忠誠と貴婦人への礼節を宗とすべき騎士が、会ったこともない姫君を侮辱するような暴言を吐くとは。

ログレスの王は、結局、言を左右にして、妹姫を与える約束をキグナスに与えることはしませんでした。妹姫をベンウィックに送るにしても準備には時間を要するからと理由をつけ、金髪の騎士には、しばらくキャメロットに滞在するようにと告げて、その場をしのいだのです。



キャメロットの城の高い塔の出窓から、王の弟君は、兄王とトーナメントの優勝者のやりとりを聞いていました。





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