「シュン。俺と一緒にベンウィックに来てくれないか。名実共に王になったら、俺がおまえを騎士にでも何にでも叙任してやろう」

その夜、シュンは“夫”の腕の中で、“恋人”にそう告げられました。
シュンは自分の身分を隠していましたから、ヒョウガの願いを拒否しようとしている兄王の言葉をヒョウガに伝えることはできませんでした。
その切なく悲しい思いが、ヒョウガの愛撫を受けるシュンの身体を一層激しく燃えたたせたのです。


「アンドロメダ姫はどうするの?」
「それはもちろん、貰い受けるつもりだが、形だけのことだ。無頼漢共を鎮圧して、国が平和になったら兄王のもとへ送り返してやるさ。俺はおまえ以外いらないから」
「…………」

それは、名より実を重視するヒョウガらしい言葉でした。
けれど、ヒョウガは、目的が果たされたら用済みとばかりに故国へ送り返される姫の立場を考えていません。

人の作った法やしきたりに支配される人の世で、夫から追い出されてしまった妻が周囲にどう見られるものか、そのことでどんな辛い思いを味わうものなのかに、礼や法を重視しないヒョウガは考え及ばないようでした。


それでも何も言えなくて、シュンは悲しい思いを見てとられないようにと、ヒョウガの胸に顔を埋めました。





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